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制度の穴突く巨額不正 ライオンの子グループ不正受給 自治体またぎ監査逃れ 沖縄県と3市、刑事告訴も検討 


制度の穴突く巨額不正 ライオンの子グループ不正受給 自治体またぎ監査逃れ 沖縄県と3市、刑事告訴も検討  公金不正受給問題について中間報告を発表する県や那覇市、浦添市、宜野湾市の担当者ら=23日、那覇市泉崎の県庁
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 社会福祉法人ライオンの子(末広尚希理事長)とライオンの子ホールディングス(末広尚希代表)が運営する保育園で発覚した公金不正受給問題は、「県が把握する限り過去に例を見ない」(真鳥裕茂こども未来部長)巨額不正事案となった。県と那覇、浦添、宜野湾の3市は監査体制を見直すほか、調査結果次第で刑事告訴も検討する。

 中間報告によると、系列7園で繰り返された保育士の虚偽配置は21年が19人、22年16人、23年10人の延べ45人に上り、給付金返還請求額は5400万円以上。勤務地とは別の自治体にある系列園で在籍扱いにして、雇用証明書などの住所も園の周辺地域に偽装していた。

 自治体の指導監査には偽造した書面を提出。勤務実態のない職員の署名を別の職員が記入したほか、記入済みの書面から署名を切り取って複写していたという。

 退職した保育士を在籍扱いにして虚偽の給与報告書を行政に提出したほか、預かった銀行口座に虚偽の給与445万円を振り込み、現金化していたことも分かっている。

 不正に得た給付金の返還請求額は21~23年分で那覇市が約1600万円、浦添市が約1千万円、宜野湾市が約2800万円。3市は地方自治法に基づいて給付金を返還請求できる19~20年分まで調べる予定。同ホールディングスが運営する企業主導型の認可外保育施設でも虚偽配置が確認されており、返還金はさらに増えそうだ。

 不正の背景には、同法人がそれぞれの自治体の監査が及ばないように、勤務自治体と異なる系列園で虚偽配置をしていたことがある。真鳥部長は「監査制度は安全な子育て環境を守るためだ」と、制度の穴を突く不正行為を厳しく糾弾した。

(嘉陽拓也、藤村謙吾)