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「軍事郵便」で薬物密輸5倍に 大半が合成麻薬 沖縄税関、米軍に綱紀粛正求める


「軍事郵便」で薬物密輸5倍に 大半が合成麻薬 沖縄税関、米軍に綱紀粛正求める 沖縄地区税関が入る那覇港湾合同庁舎(資料写真)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 沖縄地区税関は25日、2024年上半期(1~6月)の管内における関税法違反による取り締まり状況を発表した。

 不正薬物の摘発は76件で、統計発表を始めた2003年以降の通年の最多件数を上半期だけで上回った。米軍関係者が非公用軍事郵便で密輸しようとした不正薬物の摘発件数が前年同期比約5倍の49件と急増し、全体の件数を押し上げた。地区税関は上半期中に、米軍側に綱紀粛正を申し入れ、現在は減少傾向という。

 非公用軍事郵便は米本国などと在日米軍施設などを結び、米軍関係者宛に私用で使われる国際郵便。公用と異なり税関検査の対象となる。沖縄地区税関は嘉手納基地とキャンプ瑞慶覧で検査している。

 地区税関によると、非公用軍事郵便を利用した不正薬物の摘発件数49件のうち、44件を合成麻薬「MDMB―4en―PINACA」が占めた。 同麻薬は管内では23年上半期に初めて摘発され、その後、非公用軍事郵便を主な密輸手段として急増したという。米国でも規制対象の薬物だという。

 地区税関によると、米軍関係者が薬物販売サイトで注文するなどして米国から届けられたものが目立ち、いずれも自己使用目的だった。薬物を隠して密輸しようとした事例はほぼなく、税関は「違法性の認識が薄かったケースもかなり多かった」(知念勝政特別審理官)としている。検察への告発件数は非公表とする一方、「(例年と比べて)極端に増えているわけではない」(同)との認識を示した。

 24年上半期の不正薬物全体の押収量は約17キロで、前年同期の約4倍。1月下旬に八重瀬町の海岸にコカイン約15キロが漂着し発見されたことで、全体を押し上げた。

 全国的に件数、押収量ともに大幅に増加した金地金については昨年同期よりも減少し、1件にとどまった。地区税関は密輸情報の提供を呼びかけている。