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袴田さん再審無罪 「証拠に三つの捏造」 静岡地裁 冤罪訴え58年 死刑事件、戦後5例目


袴田さん再審無罪 「証拠に三つの捏造」 静岡地裁 冤罪訴え58年 死刑事件、戦後5例目 日課の散歩に出かける袴田巌さん。静岡地裁は再審判決公判で袴田さんに無罪を言い渡した=26日午後、浜松市
この記事を書いた人 Avatar photo 共同通信社

 1966年に静岡県清水市(現静岡市)のみそ製造会社専務一家4人が殺害された事件の裁判をやり直す再審公判で、静岡地裁は26日、強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌さん(88)に無罪判決を言い渡した。国井恒志裁判長は、確定判決が犯行着衣と認定した「5点の衣類」や自白調書などの検察側証拠に「三つの捏造(ねつぞう)がある」と断じ、袴田さんを犯人とは認められないと結論付けた。逮捕から58年、冤罪(えんざい)を訴え続けた袴田さんにとり悲願の判決となった。

 死刑事件の再審無罪は戦後5例目。これまでの4例は検察が控訴せず確定した。袴田さんの再審で検察は改めて死刑を求刑しており、期限の10月10日までに控訴するかどうかが焦点。

 国井裁判長は判決理由で、事件の約1年2カ月後にみそタンクから血痕に赤みが残った状態で見つかった5点の衣類、その一つのズボンの端切れ、自白したとする検察官調書にそれぞれ捏造があると指摘した。再審開始を認めた東京高裁決定などは、捏造について可能性や疑いにとどめたが、より踏み込んだ。

 衣類について弁護側鑑定書を支持し「1年以上みそ漬けされた場合、赤みが残るとは認められない」と判断、捜査機関が発見に近い時期に血痕を付け、隠したとした。袴田さんの実家から見つかった端切れも「捜査機関が持ち込んだ後に押収されたという事実を推認させる」と指摘。衣類を除く証拠では無罪の可能性があり、捜査機関が捏造に及ぶことは想定し得ると言及した。