「患者が多くて大変とは感じないが、理不尽なクレームで心が折れる」―。暴言や威嚇など患者からのカスタマーハラスメントについてアンケートを初めて実施した那覇市医師会は25日、対策をテーマにパネルディスカッションを開いた。人材不足に加え、ハラスメントに疲弊する医療や介護の現場から悲鳴にも似た声が上がり、対策の強化が急務となっている。
どんなハラスメントを受けたか。アンケートでは回答者の44%に当たる124人が「暴言」を挙げた。次いで「威嚇・脅迫」「クレームの繰り返し」が多かった。分析した喜納美津男副会長は長時間のクレームや大声での謝罪要求を受けた経験がある。非常勤の医師が「自宅も、子どもがいることも分かっている」と脅されたこともあるという。
ハラスメントの影響については「出勤が憂鬱(ゆううつ)になった」が55人、「心身に不調をきたした」「仕事に集中できなくなった」が各26人だった。ハラスメントを受けて退職した人の声は調査で拾えず「より深刻な実態がある」との指摘も出た。
パネルディスカッションには、訪問看護ステーションや介護施設の代表も登壇した。ハラスメントが離職につながるケースもあるとし、対策について説明。ハラスメントがあればサービスをいったん中止するとの書面を契約時に交わしたり、被害の情報を職員間で共有したりしているという。
助言をした野崎聖子弁護士は、ハラスメント対策の方針を院内やホームページで公表することを奨励。複数人での対応や録音、弁護士や警察への早期の相談を勧めた。
参加者からは「医療や介護の現場は信頼で成り立つ」と患者や利用者に理解を求める声も。喜納副会長は「日頃から患者と良好な関係を築くことが基本」と述べた。
(宮沢之祐)