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検察官調書を痛烈批判 静岡地裁「強制、拷問」と踏み込む 袴田さん無罪判決


検察官調書を痛烈批判 静岡地裁「強制、拷問」と踏み込む 袴田さん無罪判決 (イメージ)
この記事を書いた人 Avatar photo 共同通信社

 静岡県の一家4人殺害事件で袴田巌さん(88)に再審無罪を言い渡した26日の静岡地裁判決は、最大争点の「5点の衣類」を巡る具体的認定より先に、自白をさせた検察官調書がそもそも「強制、拷問または脅迫」に基づいていると指弾した。袴田さんの再審を認めた従来の司法判断より格段に踏み込んだ内容で、当時の捜査手法への痛烈な批判となった。

 判決によると、袴田さんは警察署で1日平均約12時間の取り調べを受けた。弁護人との接見も限られ、取調室に便器を持ち込んで排尿させられた。担当検察官は自白に至るまで、警察官と入れ代わり立ち代わり、証拠の客観的状況に反するうその事実を交えながら袴田さんを追及した。

 これを踏まえ判決は、検察官が作成した自白調書を「実質的な捏造(ねつぞう)」と断じ、「黙秘権を侵害し、肉体的・精神的苦痛を与えて供述を強制する非人道的な取り調べだった」と非難して証拠から排除した。

 5点の衣類を巡っては、付着した血痕の色の評価が再審公判でも最大の争点となった。判決はみそ漬け実験の結果や専門家の意見、当時のタンクの環境などを総合的に検討。「タンクで1年以上みそ漬けした場合、血痕は赤みを失って黒褐色化する」とし、赤みが残っていた5点の衣類は「犯行時の着衣ではない」と判断した。

 5点の衣類は、当時の裁判開始後の1967年8月に見つかった。判決は、袴田さんが当時の初公判から否認に転じたことから「有罪を決定付けるため、捜査機関が衣類を捏造することは想定できる」と指摘。「捜査機関によって血痕を付けるなど加工がされ、発見時から近い時期にタンク内に隠された」と認定した。

(共同通信)