伊是名の竜巻を語り継ぐ <気象予報士・島尻勝の天気をヨム>


伊是名の竜巻を語り継ぐ <気象予報士・島尻勝の天気をヨム>
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 過去の大きな災害を語り継いでいくことは、防災の基本である。1972年に糸満で起こった竜巻で、1人亡くなっている。この竜巻は人的な被害が大きかった。

 しかし、物的被害の大きさで言うと、83年9月25日に伊是名村を襲った竜巻がダントツで大きい。新聞には「ピックアップ車が空中に舞い上げられ、60メートルも離れた家の屋根に裏返しでのっかかった」と記載されている。ものすごい威力で恐怖を覚える。被害は住居の全壊18戸、半壊11戸で、負傷者は重症2人を含む29人であった。

 この竜巻の次に住宅の全壊戸数が多かったのが72年6月の糸満の竜巻で全壊住宅4戸、負傷者が多かったのは94年8月20日の宮古島の竜巻で負傷者14人である。伊是名の被害の大きさが際立っている。

 この竜巻を調べた琉球大学の教員が「これだけの被害で亡くなった方がいなかったのは奇跡的だった」と述べている。竜巻の発生率は、沖縄が全国一である。災害は忘れた頃にやってくる。伊是名の竜巻を語り継ぎたいものである。

 気象予報士・防災士の島尻勝さんが沖縄の気象や防災・減災にまつわる話題をつづります。

 島尻 勝(しまじり・まさる) 1954年生まれ。宮古島市出身。沖縄気象台などで40年勤務。気象防災アドバイザー取得。県内ラジオ局で天気にまつわる番組を担当。