田吹 遥子 沖縄芝居役者の伊良波冴子（いらは・さえこ）さんが10日午後11時20分、老衰のため糸満市の病院で死去した。87歳。サイパン生まれ、自宅は南城市。通夜、告別式は親族のみで執り行った。
1936年生まれ。父は沖縄芝居の名優で劇作家の伊良波尹吉さん。44年に初舞台を踏み、戦後は梅劇団で子役を務める。52年に乙姫劇団へ入団。66年に兄の晃さんが立ち上げた「劇団伊良波」で共に伊良波作品を継承した。長年、団長も務め、若手役者を指導するなど、後継の育成にも尽力した。99年に県指定無形文化財「琉球歌劇」保持者に認定された。
沖縄芝居役者の八木政男さん（93）は歌劇「泊阿嘉」などで相手役を演じた。「歌がうまくて演技も素直。沖縄では上位だった」と話し、訃報に「こんなにさみしいことはない」と悲しんだ。
乙姫劇団時代などに一緒に舞台を踏んだ中曽根律子さん（83）は「さーちゃんねーさんは声がきれいで顔立ちがかわいらしかった。百姓役をしていても目立っていた。共演できて本当に良かった」と振り返り「元気か気になっていたが」と訃報に声を落とした。
（田吹遥子）
