中国軍機が8月下旬に日本領空を初めて侵犯した際、日中両政府が防衛当局幹部間のホットライン(専用回線)を使用していなかったことが4日分かった。昨年5月にホットラインの運用開始を発表して以降、防衛当局間の交流行事での利用にとどまっており、形骸化の実態が浮き彫りになった。複数の日中外交筋が明らかにした。
海上自衛隊の護衛艦「すずつき」が今年7月に中国領海で異例の航行をした際も、ホットラインを使わなかったことが判明している。機能不全が続けば、偶発的衝突などを回避できない懸念が強まる。
外交筋によると8月26日に長崎県の男女群島沖で中国軍機が領空侵犯した後、日中は通常の外交・防衛ルートで連絡を取り合った。中国政府は日本政府に対し、領空侵犯の「意図はない」との趣旨を伝えたとされる。
ホットラインには内部の運用規定があり、使用前に毎回、当局間で協議することが定められているという。日本政府関係者は「現状では迅速な意思疎通ができない」と指摘している。
防衛省の発表によると、中国軍のY9情報収集機1機が8月26日午前に男女群島沖に飛来し、約2分間、領空侵犯した。航空自衛隊の戦闘機が緊急発進(スクランブル)して対応。木原稔防衛相は27日、ホットラインについては「回答を差し控える」とし、使用の有無を明らかにしなかった。
ホットラインは自衛隊と中国軍の不測の事態を回避するための日中の相互通報体制「海空連絡メカニズム」の柱と位置付けられている。
2007年に日中首脳が設置に向け合意した。両国関係の悪化を背景に準備が遅れたが、防衛省は昨年5月に運用開始を発表した。
有料
日中ホットライン使用せず 形骸化の実態浮き彫り 中国軍機領空侵犯
この記事を書いた人
琉球新報朝刊