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<記者コラム>見逃さないように 明真南斗(東京報道グループ)


<記者コラム>見逃さないように 明真南斗(東京報道グループ)
この記事を書いた人 Avatar photo 明 真南斗

 2023年3月、防衛省を訪れたエマニュエル駐日米大使に質問を投げかけた。新たな安全保障関連3文書を受けて日米が一体化を深める中で、沖縄の基地負担が増していることをどう捉えているのか聞いてみたかった。

 エマニュエル氏は表情を変えず「自由で開かれたインド太平洋を守るための責任だ。負担ではない」と答えた。基地負担そのものを否定したことに驚いた。沖縄を「太平洋の要石」としか見ず「捨て石」にしてはばからない態度は、後に相次ぐ米兵の性的暴行事件への対応、事件を知りながら笑顔で来県したことに符合する。

 防衛省では複数の報道機関が共に取材していたが、翌日、エマニュエル氏の発言を伝えたのは琉球新報だけだった。他の記者が反応しなかったのは、発言内容に驚きを覚えなかったからだと推測する。厳しい安全保障環境を考えれば「沖縄の負担が増すのもしょうがない」と当然視するような風潮が、メディアに限らず日本全体に広がっているように感じる。だが沖縄で生きていく私たちは「しょうがない」で済ませるわけにはいかない。

 東京に常駐する沖縄の記者は少ない。私たちが見逃せば表に出ないことがある。責任の重さを忘れず読者に情報を届けたい。そして軍事的要衝ではなく、人が暮らしている場として沖縄を捉えた報道が広がるよう、在京メディアの記者とも交流や議論を深めたい。