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包囲網、強行突破へ 各党、全面対決及び腰 兵庫知事「出直し選」


包囲網、強行突破へ 各党、全面対決及び腰 兵庫知事「出直し選」 兵庫県庁で行われた斎藤元彦知事の記者会見=26日午後
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 斎藤元彦兵庫県知事が選んだのは、失職と出直し選だった。全会一致で不信任を突き付けた県議会の包囲網を、直接の民意で強行突破する狙いだ。記者会見では3年間の実績を並べて「改革派」をアピール。対立候補を抵抗勢力に位置付ける思惑が透けた。県政の停滞長期化を憂慮する議会は知事選準備を急ぐものの、全面対決に及び腰の姿勢も垣間見える。 (1面に関連)
兵庫県庁で行われた斎藤元彦知事の記者会見=26日午後
 「辞職の選択肢はなかった」「議会解散は最初からなかった」。26日の会見。不信任決議可決後の胸の内を明かした斎藤氏は、失職の上で出直し選に出るかどうかを迷っていたと語った。
 19日の可決を受けて、斎藤氏は翌20日からテレビ各局に相次ぎ出演。反省や謝罪を口にする一方、行財政改革をはじめ就任以降の成果を繰り返し強調した。「選挙を見据えた動きだ」(公明党県議団幹部)との見方は日増しに強まった。
 会見の質疑では「おごりや慢心があった。職員との接し方を改め、議員の思いをもっと聞いていかなければならない」と殊勝な発言もあった。一方、不信任に納得していないのかと問われると、しばらく考え込んだ末に「果たして職を辞すべきことなのかどうか、が根底にある」と本音を初めて口にした。
 出直し選に勝利すれば、県民の信任が「錦の御旗」になるとの内心も「負託を頂ければ、県議会とうまく話して県政を進める推進力になる」との言葉ににじんだ。
 「ハコモノではなく『無形の価値』をつくりたいんです」。地方に元々ある魅力を生かした施策に取り組む―。知事選で支援した県議は、就任前の斎藤氏が目を輝かせて語る姿を覚えている。
 県議会最大会派の自民党と、日本維新の会の推薦で2021年に初当選。議会との両輪は有効に機能するはずだった。
 転機は新型コロナウイルス対応が落ち着いた昨年だったと自民ベテラン県議は見る。象徴が県立大の無償化。議会への根回しがないまま打ち出し、自民が反発した。「あれから転がるように悪くなっていった」。今年3月の疑惑告発文書表面化以降、元幹部の処分、百条委員会の設置と、事態は一気に進んだ。
 出直し選では議会を構成する各党との激突が避けられない。「改革を続けるのか、昔のハコモノ、しがらみの事業をやるのかを問いたい」。県民に何を訴えるかを問われた斎藤氏は、対決姿勢を鮮明にした。
 「あり得ない」。自民県議団の北野実幹事長は会見を受けた記者団の取材に、出直し選での斎藤氏推薦を即座に否定した。だが、対抗馬の選定は難航している。関係者によると、現役の県庁幹部は打診を固辞、中央省庁官僚は不発に終わり「カード不足は深刻だ」。維新は相乗りに否定的で、共産党は支援する候補を既に決めている。
 乱立含みの展開に、ある県議は「斎藤氏再選の目が出てしまう」と危機感を隠さない。当の斎藤氏は「一人の選挙戦になる。自分流の選挙も挑戦だ」とうそぶいた。