超低金利時代の資産運用として不動産投資信託が注目されています。その一つ、投資資金で不動産・動産を購入し、事業主に貸し出す「アセットファイナンス」を専門とする企業「エステックアセットマネジメント」が、2019年に名護市に設立されました。

同社の芝垣知明社長にアセットファイナンスについて聞くと同時に、同じ名護市の老舗観光施設「沖縄フルーツランド」の安里博樹社長に、観光業界の変化について聞きました。聞き手は琉球新報社編集局報道本部長の島洋子。(文中敬称略)

企画制作:琉球新報社営業局




新しい投資を沖縄の投資家に

芝垣知明氏
(エステックアセットマネジメント社長)

 しばがき・ともあき 1975年生まれ、石川県出身。97年に東京大学卒業後、三和銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。2006年に金融機関出身者を主要メンバーとする独立系アセットマネジメント会社に転じ、地方を中心とした不動産証券化などの業務全般を統括。15年から同企業グループの沖縄中核会社の代表取締役を務める。19年、名護市にエステックアセットマネジメント立ち上げ、代表取締役社長就任。




地域とともに成長する

安里博樹氏
(沖縄フルーツランド社長)

 あさと・ひろき 1974年生まれ、名護市出身。第一経済大学卒業、97年に琉球銀行入行、2002年に家業の沖縄フルーツランド入社、09年から同社代表取締役。既存の観光施設に歴史や物語を組み込んだ、テーマパークの作り込みを続ける。2018年に「コンドミニアムホテルナゴリゾートリエッタ中山」をオープン。



 


聞き手 島洋子(琉球新報社 編集局報道本部長)


沖縄観光の変化 ニーズを敏感に捉える


 島洋子 お二人は同世代で、かつ銀行で働かれた経験があります。安里さんは家業の観光施設「沖縄フルーツランド」を継いで社長に就任されました。沖縄フルーツランドは創業46年、老舗の観光パークで、親子3世代で沖縄観光の厳しい状況を乗り越えてこられました。安里さんは沖縄観光の変化をどう見ていますか。


安里博樹氏

 安里博樹 沖縄観光は変化の連続でした。1975年の海洋博の頃、観光は新婚旅行から始まりました。当時、沖縄フルーツランドの創業者はパイナップル農家で、トサカの部分を苗として離島などに売っており、余った実を海洋博を訪れる観光客に売ったのが始まりでした。まだ土産物という概念がなかったころです。その後、北部の観光課題を解決するように千人規模でご飯を食べる大型レストランや観光施設を造るなど、10年ほどの間隔で起こる変化に対応してきました。その後の大きな変化は、観光バスによる団体旅行からレンタカーでの個人旅行への流れです。団体客を対象とした接客スタイルが通用しなくなりました。

 フルーツランドでは、お客さまはフルーツがあると思って来てくださいますが、パイナップルは7、8月以外、実をつけません。団体旅行であれば、スタッフがハンドマイクで説明すれば納得していただけます。しかし少人数で来るお客さま全員に説明はできません。結果として「フルーツがない」とマイナスのイメージが出てきました。そこで光や水などフルーツが実る上で欠かせない自然の「調和」と、フルーツの力「幸せ」をメッセージにした「トロピカル王国物語」という絵本を作り、絵本の世界を体験するテーマパーク化を進めました。

 島 もう一つの変化としてインバウンド(訪日外国人)の増加もありますが、どう対応していましたか。

 安里 インバウンドもバス観光から始まりましたが変化のスピードが速いです。レンタカー旅行でも、インバウンドは家族総出で来ます。家族や親戚を連れて5、6人、多い時で10人ほどになります。そこで県内ホテルについて「みんなで泊まりたいのに、2人部屋しかない」と「一人頭の料金体系が高い」と言われました。沖縄はアジアのビーチリゾートでも衛生的で安全、身近な海外旅行として来たいけれど、疑問があるということでした。

 島 芝垣さんの出身地、石川県も観光地として人気です。沖縄との違いなどを感じますか。

 芝垣知明 金沢は街並みを含めて風情があって情緒深い、またご飯がおいしいと言われます。金沢には、飲食店が非常に多いと思います。観光客は国内のリピーターが多く、おいしい食を求めて、2、3泊で気楽に訪問できる所として人気があるのだと思います。実は統計上、インバウンドのウェイトはあまり大きくありません。今後インバウンドに向けた発信を強化することで、世界的な認知度が増すと思います。


芝垣知明氏

 沖縄の魅力は、冬の暖かさや海がきれいなことなどがあり自然資源にあふれています。沖縄と石川、それぞれ全く異なる魅力を持っていると思うんです。

 島 沖縄も金沢も多くの観光客が来ている中で、新型コロナが流行しました。今後、沖縄は何をするべきだと思いますか。

 安里 ゆっくりと来ていたであろう変化が、コロナにより一気に来たのだと思います。先ほどのインバウンドの県内ホテルへの要望もその一つです。観光施設を通して、観光客がどういう形態で来ているのか見ていると、インバウンドが特にそうですが、レンタカーでの少人数旅行からファミリーやグループでの旅行へと移っています。以前は4人乗りレンタカーに2人で来ていたのが、今はレンタカーを2台連ねて来ることもあります。2018年にオープンした当社のホテルは宿泊特化型で、1人から最大10人が宿泊でき、宿泊料は室単価です。このホテルを造る時に、県内に同様なホテルはなく、ニーズを明確にするためレンタカー業者にヒアリングもしました。

 島 このホテルのように新しい事業を始める時に必要なものは何だったのでしょうか。

 安里 ファミリービジネスであるため、創業のころから、いずれはホテル経営することを目指してきました。そこで活用できたことが2つありました。私は3人きょうだいなのですが、3人は銀行、ホテル、財務と税務の道に振り分けられました。現在は3人が力を合わせて運営しています。もう一つはやはり資産、不動産です。創業者である祖父の代からホテル用地として土地を取得してきました。その後「名護にはやはりホテルが必要だ」となり、不動産を活用することになりました。創業者の代から人材や資産を長期的に考えることができたのもファミリービジネスの強みだと感じました。

アセットファイナンス=第3の金融 事業者と投資家のウィン・ウィンに

 島 芝垣さんは、事業の拡大や新規事業の立ち上げに当たり、新しい資金支援の在り方をご提案されているそうですね。

 芝垣 資金調達の方法は、いろいろな選択肢があっていいと思います。金融機関から借り入れる、株式や社債を発行し資本調達するという方法もあります。私どもが扱うアセットファイナンスは事業者にとっては〝第3の金融〟と言えます。投資家から集めた資金を活用して不動産・動産を保有し、それを事業者にお貸しして、投資家には賃料収入から配当する方法です。特徴は事業者に安い賃料でリースさせていただくことです。事業者をサポートし、投資家にはきちんと配当することで、事業者と投資家の両方にメリットがある「ウィン・ウィン」の関係を実現することを心掛けています。


聞き手 島洋子

 島 「ウィン・ウィン」の関係というのがとても面白いですが、どのように配当を可能にするのですか。

 芝垣 決まった期間、事業者に賃料をお支払いただき、投資家には賃料を原資に安定配当します。もちろん最終的には資産を譲渡しますが、そこでいわゆる売却利益は求めません。資産そのものの価値というより、あくまで事業者の大事な資産をお預かりしていると考えているからです。不動産ファンドというと、少しでも安く仕入れて最終的に高く売る「ハイリスク・ハイリターン」の投資があります。私たちのファンドは「ローリスク・ミドルリターン」と説明しています。リスクが高くて高配当を求める投資家よりは、(投資ではあるものの)できれば損をしたくないという投資家に向いていると思います。日本で他にはない特徴だと思います。

 島 非常に興味深いです。沖縄で観光事業を見ると、例えばホテルを安く買い運営は別の会社に任せて、最終的にいかに高く売るか、というスタイルが繰り返されてきました。

 芝垣 私も過去に、不動産の利益を高めて、売却益を得るファンドを運用していた経験があります。不動産の賃料や価格が上昇し、しわ寄せが事業者に来るという状況に、違和感を覚えたのは事実です。私自身が銀行出身ということもあり、不動産ファンドをしながらも金融の面で事業者を支援したいと、11年前にアセットファイナンス事業を立ち上げました。

 エステックグループは、金融と不動産を融合し、時代が求めるビジネスモデルの構築を目指す企業グループで、その中核会社として、沖縄の当社があります。グループには他にエステック不動産投資顧問社が金沢にあります。投資である以上ノーリスクということはありませんが、アセットファイナンス事業において、過去お預かりした資金を損なったことはありません。

 島 グループ中核を担う会社を沖縄に設立したのはなぜですか。


芝垣知明氏

 芝垣 沖縄を本社にファンド事業を推進する企業として、唯一無二の存在になる、そんな思いがあります。当社は世界でも有数な投資銀行に比べれば規模も知名度もありませんが、「他の投資銀行がしていないこと」を突き詰めていくことで、東アジアにおける「オンリー・ワン」の投資銀行となることを目指します。台湾や香港、シンガポールなど東アジアの主要都市に向けて、沖縄の地理的な強さを生かしたいと考えました。

 島 不動産以外にも動産を扱った事業が始まっていると聞きました。

 芝垣 公共施設の設備更新に民間資金を導入する「動産ファンド」は、沖縄で導入した日本初の試みです。設備更新の費用は補助金や起債の対象から外れてしまう上に、リース料も高いことから、自治体は単年度費用として予算承認を取ることが多いです。ここでも安い賃料でのリースを実現することで自治体に貢献できます。すでに2019年に名護市の公共施設の空調設備で事業導入し、他の設備にも広げています。特にコロナ禍で初期投資をなるべく抑えたいという自治体のニーズは全国的に増えています。

地域特化型ファンドの創造 資金の“地産地消”図る

 島 今後の展望を聞かせていただきたいのですが、芝垣さん、投資案件もコロナの影響を受けているのでしょうか。

 芝垣 アセットファイナンス事業においては、今のところ目立った影響はありません。経済の主役は事業者で、私たちは名脇役として位置付けられるようにしていきたいと思います。その中で貢献できることとして2点考えられます。1点目は、アセットファイナンスを沖縄県内の投資家にも届けていきたいということです。当社はこの夏で設立2年半になり、投資残高は500億円に到達する見込みです。投資家からは200億円近くお預かりし運用しているのですが、この投資家は全て県外の企業です。今後は県内の富裕層や、運用ニーズのある企業にも届けていきたいと思っています。


(左から)安里博樹氏 芝垣知明氏

 2点目は沖縄地域特化型のファンドを作りたいということです。北陸地区では「北陸ファンド」が設立間近です。この地域特化型ファンドは、事業家も投資家も地元の皆さんということで、ファンドの利益を地元に還元する「資金型の地産地消」がコンセプトです。沖縄の投資資金を活用し、沖縄の事業者が営業する施設や店舗を通じて、地元経済を活性化させつつ、配当や利息として地元の投資家や金融機関に還流させます。沖縄地域特化型のファンド立ち上げのためにも、まずは県内の投資家に関心を持っていただきたいです。

 島 沖縄の投資家でも、地元経済に何らかの形で貢献したいという気持ちはあると思います。その思いが叶えられる投資ですね。

 芝垣 ここ数年内に実現したいと思っています。アセットファイナンスのコンセプトを大事にしたいので、ボロもうけしたいという投資家にはお勧めできません。「ローリスク・ミドルリターン」を求める投資家とは相性は良いと思います。


安里博樹氏

 安里 地元経済に貢献できる投資に大きな可能性を感じます。私は地元、名護にも可能性を感じております。と言うのも、当社ホテルの宿泊客から、以前は沖縄到着日と最終日は那覇に泊まる観光客が多かったのですが、最近は最初から最後まで名護で宿泊するという観光スタイルが増えていると分かったからです。中南部への移動も渋滞しませんしね。名護の立地により、新しいスタイルが生まれているのだと思います。

 島 ではこのポテンシャルを生かして、コロナ時代にどのような展望をお持ちになりますか。

 安里 われわれは、次は街づくりという方向で進んでおりまして、沖縄フルーツランドを開放し、いろいろな店が集まる街のようになればいいと考えています。

 芝垣 私は沖縄に縁のあった7~8年前から約2年間、名護に住んでおりましたが、確かに北部にはポテンシャルがあります。名護は北部と言っても沖縄本島の真ん中です。官と民とが協力していくことで、名護、北部だけでなく、沖縄はさらに伸びていくポンテンシャルがあると思います。

 島 沖縄そして北部のポテンシャルを生かした街づくりを進め、その中でファイナンスが有効的に活用されることを期待しています。


コンドミニアムホテルナゴリゾートリエッタ中山で北部観光や資金調達の在り方などについて話しました=1月29日、名護市


エステックアセットマネジメント(ESTAM)


 金融と不動産を融合し、時代が求めるビジネスモデルの構築を目指す企業グループ「エステックホールディングス」の中核会社として、2019年に名護市に設立。不動産・動産を対象とした「アセットファイナンス」を主力事業とし、オーダーメイド型の投資機会の創造に向け、各種ファンドの組成・投資運用を行う。那覇、東京、金沢に拠点を持つ。

金融商品取引業 沖縄総合事務局長(金商)第12号
加入する協会:一般社団法人第二種金融商品取引業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会

https://estec-inc.jp/assetmanagement/


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