(33)あやー・たーりー/身分で違う呼び方

 おじいさん、おばあさんについて前に申し上げたので、今回は、おとうさん、おかあさんについて述べてみたい。
 この「父親」と「母親」の呼び方も、「祖父母」を呼ぶ時と同じく、琉球王国時代には身分により異なっていた。
 つまり、「大名(でーみょー)(貴族)」、「士(さむれー)(士族)」、「百姓(ひゃくしょー)(平民)」、それぞれの身分に応じて呼び方が違っていた。

 一番上の身分である大名(でーみょー)は、父親を「按司前(あじーめー)」と呼んでいたようだ。母親のことは「あやー」と呼んでいる。
 大名(でーみょー)の下の身分である士(さむれー)だが、父親は「たーりー」と呼ぶが、母親は大名と同じく「あやー」と呼ぶ。この「たーりー」という言葉だが、中国語の「大人」、もしくは「大令」からきているともいわれている。
 面白いのが、士族は「おとうさん、おかあさん」と続けて言う時には「あやー、たーりー」と、「母親」を先に呼ぶのだ。
 なぜなのかはわからないが、「あやー、たーりー、うんちゅー拝(をぅ)がでぃ呉(くぃ)りよー(おかあさん、おとうさんによろしく言ってくれよ)」と使うように、「あやー(母親)」を先に呼ぶのが士族のならわしのようだ。しかし、平民はそうではない。
 最後は平民の呼び方。父親は「主(すー)」で、母親は「あんまー」と言う。

 ちなみに、韓国語で庶民的な言い方の「母ちゃん」は、「おんまー」と言うらしい。なぜかうちなぁぐちと似ている。
 これら身分による呼び方の違いは、琉球王国時代にはきっちり区別をしていた。
 ところが、現代ではこういう呼び方はほとんど失われてしまっていると言えるだろう。
 最近、うちなぁぐちでおとうさん、おかあさんを「すー、あやー」と言うお年寄りがいらっしゃった。
 これでは、父親が平民で、母親が士族という意味になり、琉球王国時代にはありえない夫婦の組み合わせになってしまう。
 現代では、過去の身分制度なんてとんでもない話ではあるから、「すー、あやー」でも、まあいいかと思い、笑って聞き流した。
(ラジオ沖縄「民謡の花束『光龍ぬピリンパラン日曜日』」パーソナリティー)