日米専門家報告 玉虫色も際立つ溝

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に関する専門家による報告書は総じて玉虫色の内容となった。米海兵隊の次期主力輸送機のオスプレイ配備も念頭に置いた有視界飛行経路をめぐる、日米の隔たりは埋まらなかった。滑走路の配置はV字とI字の併記でまとまらず、陸上自衛隊のヘリコプター部隊常駐をにらむ日米共同使用については、協議の枠組み設置だけ合意したが、これも沖縄側の反応次第だ。菅直人首相と小沢一郎前幹事長の一騎打ちが確定した民主党代表選は普天間問題が争点化しそうで、その行方も移設協議を左右する。

 「わたしが特に重要で真剣に検討していきたいのが、代替施設を自衛隊が米軍と一緒に使用できないかということだ」。北沢俊美防衛相は報告書公表の臨時会見で、特に報告書には明記していないものの普天間代替施設の日米共同使用にかける思いを強調した。

■防衛相主導
 報告書は8月末ぎりぎりの30日深夜も日米で調整が続いていた。最後まで懸案となっていたのは、飛行経路と北沢防衛相主導の共同使用だった。
 「沖縄は自衛隊との共同使用には反対なはずだ」。日米間の専門家協議で米国務省担当者は、沖縄社会の自衛隊への特別な感情を見透かしたように、共同使用に否定的な見解を示した。
 北沢防衛相が共同使用を提案した背景には、三沢基地(青森)や厚木基地(神奈川)など本土での先例がある。騒音への苦情などでも自衛隊が米軍と地域住民との間の緩衝剤になっているという認識に基づく。
 北沢防衛相は「地元と自衛隊と米軍の三者の間でより強いきずなをつくっていく一助となるのでは」と期待感を示すが、沖縄と本土を同列に位置付けるのは無理がある。防衛省関係者は「沖縄側が反対なら取り下げる」と今後は地元の雰囲気を見極める構えだ。

■米はあくまで「V」
 両案を併記した報告書は、V字が最善だと表明する米政府にとっては本来望ましくない内容だ。だが11月に知事選を控えた日本の政治情勢に一定の理解を示し、今回あいまいな形でやり過ごすことを受け入れた。
 米政府は、代替施設建設について地元が環境面でなく、生活面を重要視していると受け止めている。埋め立て面積が大きい方が業者を活用する機会が増え、地元も受け入れやすいとの見方もある。米海兵隊は「パイロットや乗組員の安全性を考えるとVがいい」(コンウェイ総司令官)と、運用面からV字にこだわる。
 米政府関係者の一人は「そもそも普天間を移設するのは危険性除去のためだ。安全でかつ騒音も少ないV字がいいのは、誰の目から見ても明らかだ」と語気を強める。日本側がI字を主張していることには「単に自民党と同じ案にしたくないだけだ」と冷ややかだ。
 今後の協議の行方について、米側は「検討を進めるほど、V字に実行可能性があると理解するだろう」(同関係者)と強気の姿勢を崩さず、日米の溝が埋まる気配はない。
(滝本匠、与那嶺路代)