日系2世元米兵「故郷上陸前に涙」 沖縄戦従軍体験語る


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
沖縄戦に従軍した経験を語る比嘉武二郎さん(左)とハーバート・柳村さん(右)、シンポジウムを企画した県平和祈念資料館の功刀弘之さん=11月30日、糸満市摩文仁の県平和祈念資料館

 【糸満】沖縄戦に従軍した日系2世の元米兵らが語るシンポジウム「ハワイ日系二世兵士の見た戦争と沖縄」が11月30日、糸満市摩文仁の県平和祈念資料館で開かれた。ハワイ生まれで沖縄育ちの比嘉武二郎さん(90)=ハワイ在住=と、本土出身の両親の下、ハワイで生まれ育ったハーバート・柳村(やなむら)さん(89)=同=の2人の元米陸軍情報部(MIS)員が登壇。日本語やうちなーぐちを駆使して投降を呼び掛け、住民を救ったエピソードを語った。

比嘉さんは「戦争は人間が起こす最も悪いことだ」と聴衆に訴えた。
 うちなーぐちも交えた軽妙な語り口に約300人の観客が笑い、涙を拭った。比嘉さんは2歳のころ沖縄に渡り、16歳で再度ハワイに戻って米軍に入隊した。沖縄上陸の直前、船から故郷を見て「なぜ祖先の土地に攻め込まないといけないのか」と思い、涙がこぼれた。
 戦場では壕などに隠れている住民らに投降を呼び掛ける任務に従事。だが住民は米軍の誘いに応じることが禁じられており、出てこない人もいた。信用を得るため、始めに日本語で父や母の名、昔住んでいた地名などを自己紹介し、その後にうちなーぐちで話し掛けた。比嘉さんは「一番うれしいことは自分の銃を一発も撃たなかったことだ。故郷の沖縄に役に立てた」と胸を張った。会場からは大きな拍手が巻き起こった。
 柳村さんは糸満市真栄平の高台に拡声器を設置し「1時間以内に投降しないと射撃する」などと投降を呼び掛けた。すると大勢の住民が1時間過ぎても続々と出てきたため、上官に射撃開始の時間延長を願い出た。投降に応じる住民が絶えないため2時間後も延長を求め、結局3時間で計約1500人が投降した。
 だがその後は延長が認められず、最後に投降してきた女性の夫は洞窟の中で負傷し出てこられなかった。女性は射撃開始の延長を懇願したが、攻撃は開始された。柳村さんは「婦人は夫に会うことはなかっただろう」と声を落とした。会場では涙を拭う人もいた。
 比嘉さんのいとこの孫に当たる開邦高校2年の知念佐枝さんが平和メッセージを英語でスピーチした。知念さんは「沖縄とハワイの戦争体験者の証言を伝えることが平和につながると思う。私も沖縄人としての使命を果たしたい」と話した。