認知症介護の皆さん、一息入れて 与那原に無料カフェ開設


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「ゆくりカフェ」をPRする浦崎酉香さん。ソファやテーブルが並ぶ店内は落ち着いた雰囲気=与那原町上与那原のコミュニティカフェよなくる

 【与那原】認知症患者を介護する家族がカフェで気軽に休息を取れるよう、与那原町は10月20日、認知症患者の家族を対象とした「ゆくりカフェ」を開設した。対象者は、町が業務委託した「コミュニティカフェよなくる」(町上与那原)を無料で利用できる。

自治体と民間が連携し、被介護者や家族を支援する県介護保険広域連合の「地域支援事業」を活用した。認知症患者家族のレスパイトケア(一時休息支援)のために同事業の一環として自治体と民間のカフェが協働で取り組むのは県内で初めて。
 町福祉課の宮城きよみ課長は「認知症は患者本人の自覚がなかったり、恥ずかしさで認めたがらなかったり、とてもデリケートな病気だ。徘徊(はいかい)する患者を支える家族は常に気が張り詰め、悩みを抱えていても声を上げにくい現状がある」と指摘する。「行政の相談窓口は敷居が高く感じるかもしれないが、カフェなら周囲の目を気にせず、気軽に立ち寄れるのではないか」と、開設の意義を語る。
 厚生労働省が2013年度に始めた「認知症施策推進5カ年計画(オレンジプラン)」は、「認知症カフェ」の普及によって認知症患者やその家族の支援を推進することを目指している。県高齢者福祉介護課の山内昌満班長は「各自治体で認知症に対する施策がそれぞれ進められている。与那原町の取り組みは行政が一歩前へ踏み出した好例だ」と話す。
 「ゆくりカフェ」は、日常生活に若干の支障を来すとされる、日常生活自立度が2a以上の認知症患者を家族に持つ町内在住者が対象。利用希望者は町福祉課窓口で申請すれば、よなくるを無料で利用できるチケットを受け取ることができる。利用回数は月3回程度を想定している。
 よなくるでは、コーヒーや紅茶が自由に飲めるほか認知症に関する資料や書籍などを閲覧できる。チケットによる無料利用は月~木曜、午前11時から午後5時まで。毎月第2火曜日は専門の相談窓口を設ける。
 よなくるの浦崎酉香代表は「一息ついて、自分のために時間を使うことが、家族のためにもなる。自分自身を取り戻すきっかけにしてほしい」と呼び掛けた。宮城課長は「カフェで認知症患者の家族同士が顔見知りになり、自然と家族会がつくられるような環境を整えていけたら」と期待した。問い合わせは町福祉課(電話)098(945)1525。(内間安希)