力強さ、重厚さ、哀愁 スーパーコンチェルト2014


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 スーパーコンチェルト2014が9日、南城市文化センター・シュガーホールであった。出演は新垣伊津子(ビオラ)、大藪祐歌(ピアノ)、屋比久潤子(バイオリン)。指揮は庭野隆之。オーケストラはカンマー・ゾリステン21。コンチェルト(協奏曲)はソリスト(独奏者)とオーケストラが競演する器楽曲。立ち見も出るほどの会場を訪れた観衆は、三者三様のソリストとオーケストラの掛け合いに息をのんだ。

 コンサートは新垣のウォルトン「ヴィオラ協奏曲」で幕開けした。第1楽章「アンダンテ・コモド」は新垣が奏でるビオラの太く、力強い旋律が響く。第2楽章「ヴィーヴォ、コン・モルト・プレチーゾ」ではオーケストラの激しい演奏も顔を出した。第3楽章「アレグロ・モデラート」では、高貴な音色から始まり、ビオラのソロが絡み合う。終盤は静かに優しく締めくくった。
 大藪はラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番ハ短調作品18」を演奏。第1楽章「モデラート」で物悲しげなソロから始まり、徐々に弦楽器も加わっていく。重厚な音色が神聖さを演出し、第2楽章「アダージョ・ソステヌート」はオーケストラから幕開けし、生き生きと情感たっぷりに大藪が弾く。第3楽章「アレグロ・スケルツァンド」は鍵盤上で大藪の指先がリズミカルに跳ねた。
 屋比久が披露したのはチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35」。第1楽章「アレグロ・モデラート―モデラート・アッサイ」は優しいゆったりとしたオーケストラから始まる。哀愁の漂う旋律を高音でかき鳴らす。第2楽章「カンツォネッタ:アンダンテ」では、弦を指ではじく「ピチカート奏法」も織り交ぜ、オーケストラとの掛け合いから続く第3楽章「フィナーレ:アレグロ・ヴィヴァーチッシモ」を盛大に締めくくった。
 集中した指先から生まれる独奏は息もできないほどの緊張感を生み出す。庭野も3人を優しく見守り、導くようにタクトを振るった。演奏が終わり、3人が舞台に現れ、ほっとした表情を見せると、会場から割れんばかりの拍手が送られた。(大城徹郎)

それぞれの個性を生かした演奏を披露する新垣伊津子=9日、南城市文化センター・シュガーホール
それぞれの個性を生かした演奏を披露する大藪祐歌=9日、南城市文化センター・シュガーホール
それぞれの個性を生かした演奏を披露する屋比久潤子=9日、南城市文化センター・シュガーホール