「胸張り自閉症と言いたい」 作家・東田さん理解訴え


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 【うるま】重度の自閉症と向き合い創作活動を続ける作家・東田直樹さん(22)の講演会「自閉症の僕が跳びはねる理由」(おきなか福祉会主催)が8日、うるま市石川会館で行われた。直樹さんと母・美紀さんが登壇した。

直樹さんは「年齢相応の態度で接してほしい」と自閉症者への理解を訴えた。自らの夢について「一人前の作家になること、僕の生き方を通して、自閉症とは何かを社会に問い続けることだ」と伝えた。
 直樹さんはスクリーンに映した原稿を読み上げるように声を出した。「自分が自閉症だと胸を張って言える人間になりたい」と意志を示した。その一方で、声や言葉について「声が出せて言葉になっていても、それがいつも自分の言いたかったこととは限らない」などと胸の内を明かした。
 パニックになった時は「思い通りにならない体、伝えられない気持ちを抱え、ぎりぎりのところで生きている」と説明し「そんな時には泣かせて。優しく見守って。苦しさのあまり自分が分からなくなり自傷行為をするのを止めてほしい」と求めた。
 学校教員には「何も分かっていないと見掛けだけで判断されても困る。学ぶ権利を保障してください。どうすれば僕たちらしく自立できるか一緒に考えてくれるとうれしい」と呼び掛けた。
―――――――――――――――――――――――――――――
子育てや療育 心構え語る母・美紀さん
 講演では東田直樹さんの母・美紀さんが子育てについて語った。
 直樹さんを育てた経験から「今の段階がその子の全てではない。通過点だ」という子育てや療育の心掛けを呼び掛けた。来場者の質問に答えながら「障がいを受け入れるまでにかかる時間は人それぞれ。障がいという事実を曖昧にしておかないと生きていけないなら、その期間は必要」と振り返った。家族の役割について「父親とは役割分担をしている。私たち家族の目標は互いに許し合うこと、ユーモアを持って過ごすことだ」と語った。
 講演では直樹さんが心の内面を表す言葉を習得した方法を紹介した。言葉の訓練は4歳の時に始めた。援助者の美紀さんが直樹さんの手を包むように握り、直樹さんの手の動きを感じ取って美紀さんが援助して行う筆談を訓練した。その後、美紀さんの手のひらを紙代わりに直樹さんが書く指筆談の練習を行った。8歳ごろから文字盤を指さしながら言葉を組み立てる文字盤ポインティングの訓練に移行したという。
 美紀さんは「人の気持ちはその人にしか分からない。筆談や指筆談に取り組むと、文字盤ポインティングでも指さした言葉がその人が本当に言いたかった言葉なのか確認しやすくなる」とアドバイスした。
…………………………………………………………………………
 ひがしだ・なおき 千葉県出身。重度の自閉症。パソコン、文字盤ポインティングにより、コミュニケーションが可能。2011年に通信制高校卒業。ブログを書きながら、これまでに詩集や童話、自閉症についての本を17冊出版している。

自分の気持ちや生き方を説明する東田直樹さんと母の美紀さん=8日、うるま市石川会館
パソコンのキーボードの配列を書いた文字盤を指さし、発話しながら来場者の質問に答えた=8日、うるま市石川会館
多くの質問が出て、東田さん親子の話に熱心に聞き入る来場者ら=8日、うるま市石川会館