<社説>県の後援拒否 地方分権に逆行している


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 精神障がい者団体やハンセン病団体でつくる実行委員会の主催する全国大会の後援を、県子ども生活福祉部障害福祉課が「国の施策に反対している」として拒否していたことが分かった。

 部の行事共催後援要領で、国の施策を効果的に推進する行事について後援を「許可」すると規定していることが理由である。地方分権に逆行した対応と言わざるを得ない。
 県に後援が拒否されたのは、29日に名護市の国立療養所沖縄愛楽園で開かれる「病があっても人として生きたい-『精神病』と『ハンセン病』を語る集いin沖縄」。ハンセン病元患者が国の隔離政策によって不当な差別を受けたことを反省し、「だれもが地域社会で生きることを当たり前とした社会の実現を目指す」という意義のある全国大会である。
 実行委は開催趣意書で、厚生労働省が進める病床転換型居住施設について「長期入院の固定化等、精神障害がある人々に対する社会的障壁の存在はますます深刻な状況に向かっていると言っても過言ではない」との見解を示している。この一文が行事共催後援要領の要件に合致しないというのである。
 当事者が国の施策に反対することは悪いことではない。国の施策に異議を唱(とな)えることは民主主義社会では当然の権利である。疑問をぶつけたり、改善を促したりすることでよりよい施策になり、国民の理解も深まる。実行委の見解に何ら問題はない。
 精神科病院の病床の一部を居住施設に転換し、患者の退院先とする厚労省方針には、障がい者団体や日弁連などから「精神障がい者を地域から分離して生活させる政策を存続させるものにすぎない」と反対の声が上がっている。
 県共生社会条例は「法令に特別の定めがある場合を除き、本人が希望しない長期間の入院」の強制などを禁じている。病床転換型居住施設推進は条例に反する恐れもある。
 条例で設置された「差別などの解消に関する調整委員会」の高嶺豊委員長からは「条例を4月に施行しながら、県はその趣旨から離れている」との指摘もある。
 県がその行事の意義などを主体的に判断することを縛る「国施策の効果的推進」を、後援の条件の一つとする規約がいまだに放置されていることは問題である。各部の規約を直ちに見直すべきだ。