芸域の広さで存在感 瀬名波孝子芸歴70年


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「情無情」で再婚相手(右端、具志堅政彦)の妻(赤嶺啓子、右から3人目)をたたくカマドゥ(瀬名波孝子、同2人目)=6日、宜野座村文化センターがらまんホール

 瀬名波孝子の芸歴70周年記念を兼ねた「がらまん沖縄芝居公演」が6、7の両日、宜野座村文化センターがらまんホールで開催された。瀬名波が演技指導や衣装の寄贈をしている宜野座村の沖縄芝居愛好家集団「美ら芝居」や若手実演家が共演した。

演目は時代人情歌劇「狂女の舞」(石川文一作)と現代歌劇「情無情」(伊良波尹吉作)。瀬名波は正反対の人物を演じ分け、幅広い芸域を見せた。
 「情無情」は美ら芝居と共演した。粗筋は妻子ある正夫(新川秀人)がジュリのチル小(伊芸廣美)と恋仲になる。気の強い妻カマドゥ(瀬名波)は正夫と子ども(翁長俊輔、饒平名栞帆)を捨てて金満家(具志堅政彦)と再婚する。
 カマドゥは瀬名波のおはこの一つ。再婚相手が隠していた妻(赤嶺啓子)も投げ飛ばし、威勢の良さは衰えない。憎めない悪役ぶりで盛り上げた。地謡は仲宗根盛次古典民謡研究所。
 「狂女の舞」は若手実演家と共演した。士族の真三郎(金城真次)はジュリのウサ小(伊良波さゆき)に支えられ科挙に合格する。しかし、出世するために仲地親方(嘉数道彦)の娘真加戸(知念亜希)との結婚を選ぶ。ウサ小は悲しみのあまり正気を失う。
 瀬名波は「情無情」とは打って変わり、息子に情けの大切さを訴える優しい母を演じた。ほかの出演は嘉陽田朝裕、平敷勇也、永田加奈子ら。地謡は玉城和樹、米増健太、仲大千咲、澤井毎里子。
 「足腰の立つ間は頑張る」と声を弾ませる瀬名波。多くの舞台で若手を指導し、気さくな人柄と芝居に沖縄らしさをもたらす演技力で慕われている。若手には言葉の抑揚などに課題があると指摘する。芝居黄金期に培った技芸が次世代に受け継がれ、75周年でも元気な姿を見せてくれることを期待したい。(伊佐尚記)