伊礼英貴さん受賞 琉球新報短編小説賞


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伊礼 英貴さん

 第42回琉球新報短編小説賞の受賞作は伊礼英貴(えいき)さん(50)=本名・伊禮英貴(ひでき)、嘉手納町=の「モヤシのヒゲ取ります 一袋十円」に決まった。佳作に八重瀬けいさん(59)=本名・篠原敬子、福岡市、会社員=の「聞き屋リリィ」を選んだ。

 40編の応募作品を2次にわたる予備選考で5編に絞り、芥川賞作家の又吉栄喜、文芸評論家の湯川豊、早稲田大学教授の勝方=稲福恵子の3氏が15日、東京都内で最終選考を行った。
 「モヤシのヒゲ取ります 一袋十円」は、縁側でモヤシのヒゲ根を取っていた主人公の貞子が人影を見掛け、上京して行方が分からなくなっていた次男に会えるような気がしてモヤシのヒゲを取り続ける物語。
 選考会で又吉氏は「亡くなったのか生きているのか分からない息子を『現出』させるため静かにモヤシのヒゲを取る老女の姿に、生と死を超越した崇高なものを感じる」、湯川氏は「老いた母の中で育つ駄目な次男のイメージ。次第にそのリアリティーが濃くなる見事な短編」、勝方氏は「次男の生き霊の気配を感じ取ろうとする貞子の思いと、日常の均衡を崩すまいとする長男の哀(かな)しさが簡潔に描かれている」と評価した。
 贈呈式は来年1月30日に那覇市の琉球新報泉崎ホールで開催する。