『沖縄経済入門』 生活者目線で分かりやすく


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『沖縄経済入門』宮城和宏監修 沖縄国際大学経済学科・1500円+税

 沖縄国際大学経済学部の教授陣によって、待望の「沖縄経済入門」が出版された。本著の執筆理由は、1年生前期の必修授業、「沖縄経済入門」を受講した沖縄県出身学生が、沖縄経済の実態についてほとんど知らなかった、という教育者としての危機意識だ。

 日本とは異なる文化、歴史、経済構造を持つ沖縄経済への理解と認識を深めるという、地域に根ざした大学を希求する大学人としての使命感もある。さらに、沖縄経済が「財政依存度が他の県よりも高い」や「基地依存度が高い」など沖縄経済への風説に対する研究者としての解答である。
 このような編集方針を反映し、筆者が知る得るこれまでの沖縄経済関係の書籍にはない、ユニークさと工夫に満ちあふれた入門書に仕上がった。
 何よりも学習の手軽さである。興味関心のあるテーマから学べるため、第1章から順序よく読み進める必要がない。そのため、これから沖縄経済を学ぼうと考えている人、多忙な人も気楽に沖縄経済を学べる。
 また、対象読者が大学の1年生であるため、分かりやすく、丁寧な説明でありながら、学問的にも優れている。経済学の研究者に加え、経営学や地理学の研究者も分析に加わっている。漠然とした沖縄経済に、小売業の研究を加えることで、生活者目線で沖縄の経済構造を理解することができ、これまでにない身近さを感じる。
 加えて、これまでの沖縄経済関係の書籍にはない文化産業に関する研究の章を設けている。沖縄の主要産業である観光産業の発展を考える上での課題、地理的不利を生かす発想、今後の沖縄経済や社会への提言が記されている。
 最後に、アメリカ軍基地に関する研究では、普天間飛行場の地形や戦前の土地利用状況の検証、利用返還後の跡地利用の活用案も提示されている。
 沖縄経済は、本書一冊でカバーできない。本書で扱われることができなかった内容について、同様の方針や別の視点による編集と出版が、早くも待たれる一冊となった。
 (宮平栄治・沖縄経済学会会長、名桜大学国際学群教授)
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 みやぎ・かずひろ 名古屋大学大学院博士後期課程単位取得退学。博士(学術)。九州共立大学経済学部専任講師、北九州市立大学経済学部助教授・教授。現在、沖縄国際大学経済学部経済学科・同大大学院地域産業研究科教授、経済学部長。専門は産業組織論。

沖縄経済入門~沖縄国際大学経済学科編~
沖縄国際大学 宮城和宏
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