『戦争するってどんなこと?』 沖縄の子の幸せのために


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『戦争するってどんなこと?』C・ダグラス・ラミス著 平凡社・1400円+税

 著者は、沖縄に住んで15年目。1960年に海兵隊員として沖縄に駐留した経験も持つ。本書は、長年大学で教壇に立ってきた著者が、戦争について「大和(やまと)」の中学生に向けて書いたものだ。

 本書では、沖縄と大和との区別は明確だ。「沖縄から考えるってどういうこと?」の章では、日本による沖縄の植民地化、同化政策についても述べられる。沖縄に米軍基地が集中しているのは、沖縄が時には「日本」、ある時には「外国」として扱われており、「平和憲法も米軍基地も」という矛盾した二重思考を持つ大和の人々によって都合がいいからだと説明する。
 「艦砲ぬ喰ぇぬくさー」の沖縄の私たちは、戦争を拒否する強い気持ちを持っている。学校では、毎年、「慰霊の日」前後にその悲惨さについて学ぶ。一方、戦争や軍事基地について学校で学ぶ機会はあまりない。
 本書には、沖縄戦体験者の大田昌秀元県知事へのインタビューが収録され、軍隊が住民を守らないという教訓が伝えられる。同時に、軍隊での経験を持つ著者が、兵士がどのように訓練され、戦場に送られるのかについて具体的に語る。
 沖縄の中学生が読むと、沖縄戦と米軍基地、そして現在もその基地から軍隊が派遣されて多くの人が殺されていることについて考えるきっかけになろう。
 著者によると、憲法改正や解釈改憲によって交戦権を認め、戦争を許す社会づくりに成功して戦争ができる国になれば、日本は米軍が進める終わりなき「テロに対する戦争」に参戦する可能性が高い。また、日本政府には、戦争ができる国になることで国内を統治しやすくしたいとの意図があるという。
 「良心的兵役拒否」について丁寧に書かれている点も印象的だ。著者の若い世代へのメッセージを感じると同時に、徴兵制復活への危機感が伝わってくる。
 このような日本の下で、沖縄の子どもたちは幸せになれるのか。沖縄独自の道を切り開いていくべきではないか。沖縄の大人世代も考えさせられる本だ。 (照屋みどり・しまんちゅスクール代表)
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 C・ダグラス・ラミス 1936年米サンフランシスコ生まれ。カリフォルニア大学バークレー校卒業。60年に海兵隊員として沖縄駐留。61年に除隊。80年から津田塾大教授。2000年に同大退職、沖縄を拠点に執筆や講演などを中心に活動。

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平凡社
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