飛躍へ、挑戦の時 ひつじ年実演家3人に聞く


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 2015年はひつじ年。躍進が期待される年女の芸能実演家3人にモコモコと膨らむ夢やことしの抱負などを聞いた。(伊佐尚記)

◆森田夏子・新垣和代子 女性の古典を探究
 2011年から「女性地謡の会しほら」で活動する歌三線の森田夏子(35)と箏の新垣和代子(35)。結成から3年を迎えた昨年は「稽古の年」となり、女性の琉球古典音楽の歌い方を探求してきた。
 2人とも古典を始めたのは比較的遅い方だ。森田は県外の大学で声楽を学んでいたという異色の経歴を持つ。大学2年生だった1999年、嘉手苅林昌が死去したというニュースを聞いた。「沖縄の音楽がなくなってしまう。やらなきゃ」という危機感から、翌年に県立芸大に入り直した。新垣は母が箏をやっていたが、子どものころは興味を持たず22歳から始めた。
 古典では男性は地声の発声が原則だが、女性は地声か裏声か決まっていない。しほらは「地声を使いこなした上で女性らしい歌を歌う」ことを目指す。地声だと「がなっている」「女性らしくない」と言われたこともあるが、「歌い込めばマイルドになる」と強調する。昨年、新垣がコンクールで歌三線の最高賞を受験し、地声で歌うという意識があらためて高まった。
 森田はしまくとぅばも勉強している。「言葉の意味が分からないと歌えない。しまくとぅばを話す世代の先生は歌に生活感がある」と指摘する。
 昨年は斉唱で声をそろえることを意識した。良い楽器をそろえ、低い調弦でも鳴るよう蛇皮を強く張る工夫もした。「今すぐ理想の歌が歌えるわけではない」が、ことしも着実なステップアップを目指す。
 2月27日午後7時から国立劇場おきなわで公演があり、成果が披露される。前売り券は一般2千円、小中高校生千円。

◆儀間佳和子 多彩な役柄に意欲
 琉球舞踊だけでなく沖縄芝居にも挑戦している玉城流扇寿会の儀間佳和子(かなこ)(23)。爽やかな雰囲気を持ちながら艶(つや)のある目元が印象的だ。「ことしは芝居も踊りもいろんなことに挑戦したい」と意気込む。
 6歳から浦崎みゆきに舞踊を師事している。初めての芝居出演は2009年にあった道場の公演だ。竹取物語を沖縄版にした舞踊劇「月姫」で月姫を演じた。13年には扇寿会の金城真次が創作した舞踊劇「かなし糸縁」の主役に抜てき。昨年、金城が所属する沖縄芝居研究会に加わった。
 「芝居は歌いながら体の線をきれいに見せたり、ほかの役者に気を配って動いたりするのが難しい」と話すが、堂々とした演技を見せる。幼いころからしまくとぅばが身近だったわけではない。先輩に手本を見せてもらい、台本にせりふの抑揚を矢印で書き込んで稽古している。職場のデイサービスでも、お年寄りとできる限りしまくとぅばで話すようにしている。
 昨年は同研究会の「伊江島ハンドー小」でマチー小を演じた。「どうやって元気な14歳に見せるか。自分と正反対の役を演じるのが難しかった」。役作りはいつも悩むが観客の反応が楽しいという。「三枚目などいろんな役をやりたい。先輩たちのいいところを盗んでいきたい」と真っすぐなまなざしで語った。

「女性地謡の会しほら」の森田夏子(右)と新垣和代子=10日、浦添市の国立劇場おきなわ
「いろんな芝居、踊りに挑戦したい」と意気込む儀間佳和子=9日、那覇市の琉球新報社