<金口木舌>憎しみの克服


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 やんばるから桜の便りが届く。名桜大学の中庭にもひときわ鮮やかに咲く1本がある。故ワイツゼッカー元ドイツ大統領が1999年に植えたヒカンザクラだ

 ▼「過去に目を閉ざす者は現在にも盲目になる」との一節は有名だが、その演説はこう結ぶ。「若者にお願いしたい。憎しみや敵意に陥らず、共生することを学び、自由を尊び、平和のために努力しよう」
 ▼今に通じる言葉だ。戦争やテロ、差別の根っこには憎悪が潜む。2人の賢人はこう説く。南アフリカのマンデラ元大統領「生まれた時から肌の色や育ち、宗教を理由に他人を憎む人などいない。人は憎むことを学ぶのだ」。キング牧師「憎しみで憎しみを追い払うことはできない。愛だけがそれを成し得る」
 ▼「イスラム国」による邦人殺害で、安倍晋三首相は「罪を償わせる」と怒りをあらわにした。欧米では報復の誓いと伝えられている。挑発と捉えられては厄介だ
 ▼残忍で卑劣なテロには誰しも憤りを覚える。当然厳しく糾弾されるべきだが、憎しみの連鎖を生んではいけない。感情に走らない理性的な思考も必要だ。後藤健二さんもツイッターで「憎むは人の業にあらず」と発言していた
 ▼ヒカンザクラの花言葉は「善行」。軍事的協力ではなく、人道・民生支援の善行を積み重ね、花を開かせていくことこそが、世界の信頼を得る道になる。