戦没者追悼式詩「空はつながっている」 英国の子ら翻訳


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増田健琉君の詩を英訳した(前列左から)藤井優希子さん、ジョーンズ咲良さん、ロバーツ平公恵さん。(後列左から)ロバーツ平安男さん、市ノ瀬賢人さん、藤井浩宣さん=2014年12月

 2014年6月の沖縄全戦没者追悼式で朗読された増田健琉(たける)君(9)=石垣市立真喜良小3年=の詩「空はつながっている」を、世界中の人に知ってもらおうと、英ケンブリッジの嘉悦ケンブリッジ教育文化センターで日本文化を学ぶ子どもたちがこのほど英訳した。

増田君の詩に触れた子どもたちは「平和への深い思いが込められている」などと話し、平和を願う気持ちを込めた詩に感銘を受け、英訳に取り組んだ。英訳された詩は、フランス語、ドイツ語、スペイン語、中国語、韓国語にも翻訳され、ことし3月に同センターで開かれる「ジャパンデー」で朗読される。
 英訳したのは、母親が日本人で父親がイギリス人の子や、両親が日本人だが英国で生まれ育った子、幼いころに日本から英国に移り住んだ子ら6人。毎週土曜日に、同センターで日本語や日本文化を学んでいる。
 14年6月、子どもたちにボランティアで日本語を教えている同センターのロバーツ平浩子さん(49)が、増田君の詩を子どもたちに紹介した。ロバーツ平さんは「沖縄にはここまで平和を考えている子どもがいるのかと驚いた。どうしたら戦争がなくなるのかと、必死に考えている様子に涙が出た」と話す。
 増田君の詩を世界中の人に知ってもらおうと、子どもたちに英訳を呼び掛け、作業が始まった。英訳は、それぞれ分担し日本語の雰囲気を失わないよう推敲(すいこう)を重ね、3週間で完成させた。
 翻訳した一人、ジョーンズ咲良さん(16)は「素直で真っすぐな気持ちが伝わってきた。一人一人が同じように思えたら、きっと世界は変わるだろう」と話し、増田君に「大人になっても同じような心でいてください」とメッセージを送る。また藤井優希子さん(15)は「イギリスもアメリカのように今でも戦争をしている。それでも(イギリスは)平和で、時々『どこまでが戦争でどこからが平和なんだろう』と思う気持ちがよく分かる」と、共感した様子だった。
 英訳された詩は、ロバーツ平さんがケンブリッジ在住のドイツ、フランス、メキシコ、韓国、中国の人たちに翻訳を依頼。「とても美しい詩だ」と共感を呼び、それぞれの言葉に翻訳してもらったという。
 ロバーツ平さんは、昨年、増田君に手紙を送った。「健琉君の詩がたくさんの人に読まれて、それをみんなが歌のように口ずさんだら、人間の良い心が、優しい心が目を覚ますのではないかと思います」とつづった。ロバーツ平さんは「増田君の詩を読んで、大人が何とかしなければと思った。戦争を起こすのは子どもではなく、大人だからだ」と話し、増田君の思いを世界中に伝える手助けをする考えだ。