金武「北部メディカル」問題 10カ月開院できず


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開院予定日から10カ月経過しても開院できていないギンバル訓練場跡地に新設した北部メディカルクリニック=1月30日、金武町

法人選定難航 管理費4649万円、町負担運営

 金武町の米軍ギンバル訓練場跡地に、昨年4月に開院予定だった地域医療施設「北部メディカルクリニック」。町は運営予定だった医療法人「ほくと会」(宜野座村、前田利夫理事長)との契約を解除して新たな医療法人を模索しているが、まだ決まらず、開院できないまま10カ月が経過した。同施設をめぐるこれまでの経緯と課題を振り返る。

 「メディカルクリニック」は、ギンバル訓練場の返還に伴い、防衛省の沖縄米軍基地所在市町村活性化特別事業(島田懇談会事業)の予算約30億円を活用した町事業で建設した。
 2007年の計画当初からほくと会を管理予定者としていたが、13年7月に医療法違反の疑いがある行為が次々と発覚。組織体制に問題があるとして開院の手続きができず、町は昨年10月末にほくと会との契約を解除した。
 12月から3月までの維持管理費4649万円を町が負担し施設の維持管理を行っている。

◆公募せず決定

 町議会では、公募をせずにほくと会との契約を決めた町の対応を疑問視し、町の責任を求める声が相次いで上がった。
 町側は「(09年から11年の)過去3年の決算を参考にし、町民も利用する病院であることなど総合的に判断した」と説明。開院遅れへの謝罪はあったが町の責任問題には触れなかった。
 伊芸達博前副町長は、本紙の取材に「ほくと会を選定した根拠を示す文書はない」と答え、当初からほくと会に決まっていたことを示唆。違反行為の発覚後に契約変更しなかったことには「(ほくと会側からの)大丈夫という回答を信じていた」とした。

◆新法人病床が壁に

 町がほくと会との契約を解除して3カ月。町は今春の開院を目指して新法人の選定作業を進めているが、施設に既に設置された19床の病床が新法人決定の壁になっている。
 病床数は医療圏ごとに制限があり、同施設のある中部医療圏の病床数は限度数に達している。施設の病床で医療行為をするには、同医療圏内にあり施設への移床が可能な病院を探す必要があるが、現在の病床による収入を失うことへの抵抗や、同医療圏で19床を経営できる規模の病院が少ないことなどから、選定は難航している。
 年度をまたぐと町の負担がさらに増える。仲間一町長は「年度内にはどうにか開院したいが」と苦い表情で語った。
(田吹遥子)