徳之島「前当り遺跡」 住居と水田が同時出土


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発掘調査で出土した水田跡。黒色の土の部分が水田跡だという=2014年10月1日、鹿児島県伊仙町の前当り遺跡(伊仙町教育委員会提供)

 鹿児島県・徳之島の伊仙町教育委員会はこのほど、町内にある前当(まえあた)り遺跡からグスク時代初期(11~12世紀)の住居や墓、炉、水田などの遺構を発掘した。町教委によると、グスク時代初期の水田が発掘されるのは極めて珍しく、住居と一緒に出土するのはこれまでに例がないという。

グスクに詳しい當真嗣一沖縄考古学会長は「水田と住居の跡がセットで見つかることは当時の人々の暮らしの解明につながる」と評価している。
 町教委は2014年8月から前当り遺跡の発掘調査を行っていた。調査地約4千平方メートルから掘立柱建物跡や土坑墓、鍛冶炉とみられる炉跡、水田跡などの遺構のほか同時期に徳之島で生産され、南西諸島に広く流通した陶器カムィヤキも見つかったという。
 前当り遺跡から北西約3キロの場所にカムィヤキ陶器窯跡が見つかっていることから、町教委は前当り遺跡で生活していた人がカムィヤキ生産に関わっていた可能性があるとみている。
 町教委は「グスク時代はカムィヤキの生産とともに、狩猟採集から農耕の時代に移り変わる時代といわれる。グスク時代開始期の遺跡は奄美諸島に多く、今回の発見は奄美諸島が大きな歴史のうねりの最前線に位置していたことを示すものだ」と分析している。
 當真会長は「グスク時代初期は琉球が国造りに移っていく入り口の時代だ。建物と水田がセットで発見されたことは当時の状況の解明につながっていくのではないか」と評価した。
 グスク時代は琉球列島(沖縄県と鹿児島県奄美地方)にグスクが造られた11世紀後半~15世紀を指す。