障がいのある学生支援 授業要約し伝えるノートテイク


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 沖縄大学が聴覚障がいのある学生に対する学習支援「ノートテイク」を実施して10年が経過した。「ノートテイク」は授業中の教員の発言などを傍らに座ったボランティア学生が文字に書き起こし、障がいのある学生を支える。現在、同大学の障がいのある学生の支援は、聴覚だけでなく、身体や視覚の障がいにも拡大している。同大学の取り組みを振り返る。

 沖大は2004年、聴覚障がいのある新入生に対応するため「障がい学生支援委員会」を学内に設置し、学生ボランティアが授業のノートテイクを始めた。以前にも聴覚障がいの学生が在籍したことがあり、その時は学校外の人が支援した。

ボランティア増加
 05年には「ノートテイクサークル」が発足した。学生の活動が活発になり、手書きからパソコンを使用するようになった。07年には、ノートテイク活動が、大学の評価を社会的に高めたとしてボランティア学生21人に「学長特別賞」を与えた。その後、身体や視覚の障がいのある学生へも支援の輪は広がっていった。
 14年には、大学や専門機関で構成する「日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク」が主催する第10回「日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウム」で新人賞を受賞。現在、沖大では、約50人の学生ボランティアが、聴覚障がいなどのある9人を支援している。
 ノートテイクは、障がいのある学生1人に対して、2人のボランティア学生が支援する。ボランティア学生は、授業の内容を要約してパソコンに打ち込み、障がいのある学生が読み取っていく。ボランティア学生は10分間と時間を決めて交互にノートテイクをする。

双方に変化
 聴覚に障がいのある2年生の比嘉真智さん(20)=西原町=はノートテイクの支援があることを知り、沖大への進学を決めた。地域の高校で学んでいたが、授業の内容を理解することが難しいこともあった。ノートテイクのおかげで大変助かっているという。「ノートテイクがなかったら勉強も大学生活も楽しめなかった」と笑顔を見せる。
 2年生の時からボランティアとして関わっている4年生の宜名真正吾さん(22)=うるま市=は始めた当初は不安だったが、ノートテイクの勉強会や支援学生との会話で解消されていったという。「勉強会も大切だが(障がいのある)学生とコミュニケーションを取っていれば、安心し、集中して取り組むことができる」と秘訣(ひけつ)を語る。
 比嘉さんの授業を受け持つ講師の我部聖さん(38)=那覇市=は、ノートテイクについて「障がいのある学生に対する理解が深まるだけではない」と話す。文字起こしの時間を少し待つ間、他の学生も授業内容を深く考え、教員もより分かりやすい講義を心掛けるようになるという。「ノートテイクは障がいのある学生だけでなく、ほかの学生や教員にもメリットがある」と話した。

ノートテイクの支援を受けて授業を受ける比嘉真智さん(左から3人目)とボランティア学生の宜名真正吾さん(同2人目)と新垣侑佳さん=1月23日、那覇市の沖縄大学
ノートテイクをしているパソコンの画面