『ジュピター』 物語の発想は面白いと思うが…


社会
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 『マトリックス』シリーズのウォシャウスキー姉弟作新作。って、いまだ12年前にシリーズが完結した作品を、代表作として挙げなければならないのが悲しいところ。その後、『スピード・レーサー』とか『Vフォー・ヴェンデッタ』とか製作しているのだけど、『マトリックス』を超える傑作を生み出せずにいる。毎回、期待して見るんだけどね。正直、本作も辛口にならざるを得ない。

 ミラ・クニス演じる家政婦のジュピターが、突然、何者かに襲われるところから始まる。実は彼女は、宇宙最大の王朝の王族という遺伝子を持つ者。その宇宙では今、3人のイケメン継承者が、地球の相続権争いを展開していたのだ。そこで支配権を持つジュピターを手中に収めようとあれこれ画策するのだが、要は政略結婚を狙うんですな。って、古ッ! 近未来を謳いながら、いつの時代の話だよって感じ。
 宇宙を支配している王族がいて、地球という星は彼らの管理下の一つにすぎないという発想は面白いと思うのだよ。映像も、スペイン・ビルバオのグッゲンハイム美術館という既存の建物をどこぞの星の空間に見立てており、映画祭で毎年訪れている良く知る場所だけにワクワクした。だが、いかんせん、家政婦から王族の遺伝子を持つ者という飛躍も説得力がない。CGをバリバリ使って、肉体派俳優チャニング・テイタム得意のアクションを封じ込めちゃ、彼の魅力が半減だ。
 個人的にウォシャウスキー姉弟といえば、『バウンド』が大好き。SFはひとまず休止し、小気味いい現代モノにそろそろ戻したら? ★★☆☆☆(中山治美)

 【データ】
監督・脚本・製作:ラナ&アンディ・ウォシャウスキー姉弟
製作:グラント・ヒル
出演:チャニング・テイタム、ミラ・クニス
3月28日(土)から全国公開
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中山治美のプロフィル
 なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き。
(共同通信)

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中山治美