沖縄演劇の課題 痛感 「劇王天下統一大会」に参加して


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「劇王」参加後、沖縄の関係者に披露された「@オ・キ・ナ・ワ」=3月13日、那覇市のシアターテン

 「劇王天下統一大会」(2月27日~3月1日、神奈川芸術劇場)に沖縄代表として参加した。全国の予選を勝ち抜いてきた各地の劇王(劇作家を中心とした劇団に限らないチーム)が統一ルールの下、芝居で闘って審査員と観客の票数を競い、勝者には天下統一を果たした者として「劇龍王」の称号を授与する劇作家主役のイベントだ。

 天下統一ルールは「上演時間20分」「役者3名以下」「簡易な舞台装置」「舞台の広さ四間四方」のみ。主催は実行委員会のほかに神奈川県などが、共催には日本劇作家協会、KAAT神奈川芸術劇場が名を連ねる。審査委員長のラサール石井さんを始め、渡辺えりさんや鴻上尚史さんら舞台、映像の第一線で活躍されている方々から厳しい講評を頂けるなど、かなり「天下統一」な大会だった。
 私たちは「@沖縄向上委員会」の名で現代演劇俳優(犬養憲子、桃原和希)と琉球舞踊家(安次嶺正美)の3名で出場し、「@オ・キ・ナ・ワ」(吉澤信吾作、田原演出)を上演した。ある普通の家庭で母が他界。長女と次男と長男嫁はトートーメーを押し付け合い、そこから「じゃあ遺産とトートーメーをセットでどうぞ」となり、話題の向こう側に基地移設問題が絡んで…という内容だ。
 賞は逃したが、初出場ながら沢山(たくさん)の票を頂き、審査員から「沖縄の日常を自然に(描いた)」、「動きが無い芝居なのに引き込まれた」など恐縮してしまうほどお褒めの言葉を頂戴した。
 全国12団体の頂点「劇龍王」の栄光に輝いたのは九州代表・不思議少年の「スキューバ」の作者・大迫旭洋さんだ。
 実は“勝つ気満々”で挑んだので”負け”は非常に悔しいが、各代表と同じ舞台で闘い、沖縄演劇の印象を強烈に残せたこと、人の輪が広がったことは大きな収穫だった。
 一方で、多くの方々と交流する中、沖縄の舞台芸術には、他県の方々にまだまだ及ばない部分が多くあるということを痛感させられた。
 それはまず技術だ。そして情熱、さらに情報。付随して知識、知恵だ。加えて、そこから派生する競合の不在、人力と時間の蓄積不足…。これは原因と結果どちらが先かの議論になるが、負けた後は横浜中華街で唐辛子を囓(かじ)りながらそんなことを考えていた。
 もちろん全てを負の方向に受け取ってはいない。悔しさは正の力へ変換し、理解を次回の活力に、未来への栄養を得られたのだと深く感謝している。沖縄でも「劇王」を行い、全国の演劇人とともに切磋琢磨(せっさたくま)し、沖縄現代演劇の質を高め、沖縄舞台芸術の向上と発展の一助になれたらと思う。
 (田原雅之=Theater TEN Company代表・演出家・俳優)