劇団O.Z.E「四人脳」 4脚本、多彩な世界


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 劇団O.Z.Eの演劇「四人脳」が10~12日、那覇市の「わが街の小劇場」で開催された。総合演出は1月に劇団の二代目頭に就任した新垣晋也。最初の設定、最初と最後のせりふだけを決め、4人の脚本家が自由に書いた短編を上演した。SFからコメディー、サスペンスなど多彩な作品が生まれ、脚本家の脳内をのぞくような刺激的な試みとなった。

 ルールは(1)最初の場面で女装した人がドアにしがみついている(2)最初のせりふは「今ならあんな間抜けな事故起こさないんですけどね」(3)最後のせりふは「やっぱり私は嫌われる」。
 後藤聡の脚本「ミーム」(後藤演出)は、男に生まれながら母(金城理恵)に女として育てられた望愛(のあ)(新垣晋也)と人工知能ミーム(幸地尚子)が語り合う。人工知能を鏡に人間の複雑な感情を描いた。幕に映した役者の映像と実際の演技を絡ませる演出も目を引いた。一方、短編にしては物語が複雑で少し分かりにくかった。
 永田健作の脚本「ロミオとジュリエットと召使い」(金城演出)は、ジュリエットの召し使い(山里三七樹)がジュリエット(平良直子)を装い、ロミオ(上原一樹)と破局させようとする。黒衣(くろこ)(金城明斗)が役者に突っ込みを入れるコミカルな演出。「やっぱり私は嫌われる」の使い方に一工夫が欲しかった。
 山田享楽の脚本「じわりじわり」(山田演出)は、和也(上原)、直樹(松原進之介)が女性の心を持った同級生倫太郎(呉屋みずき)の思い出話をする。ばかばかしいやりとりから復讐(ふくしゅう)劇に一転すると思いきや、もう一つどんでん返しを用意した。「ドアにしがみつく」という設定から物語をうまく膨らませた。
 我那覇孝淳の「二本の怒涙」(我那覇演出)は不良少年(安泉清貴)が劇作家(新垣)を脅迫する。加害者、被害者という関係の2人に共通点があることが判明。ほかの脚本では「嫌われる」のは1人だったが、本作では2人だったという結末が面白かった。
 ほかの出演者は又吉裕子、秋山ひとみ。
 「四人脳」は来年も開催する予定という。脚本家に焦点を当てる企画は県内では珍しく、切磋琢磨(せっさたくま)が期待される。新垣は演劇ファンを増やすため「いろんなアプローチを考えたい」と話す。代替わりしたO.Z.E.が一層意欲的な試みを見せてくれることを期待したい。(伊佐尚記)

望愛(左・新垣晋也)と語り合う人工知能ミーム(幸地尚子)=10日、那覇市の「わが街の小劇場」
ジュリエットの母(左・平良直子)に命じられ、ジュリエットを装ってロミオ(中央・上原一樹)と結婚する召し使い(山里三七樹)