『寄生獣 完結編』 疾走感がトーンダウン


社会
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 主人公・新一の右手に寄生したパラサイト「ミギー」のCGとは思えぬリアルさと、寄生されたら肉親も容赦なく食べてしまうパンデミックの恐ろしさを怒濤の展開で見せきってしまった前編。それから5カ月。配信されている「おさらいダイジェストPV」などで前編は復習していただくとして、完結編は激化した人間VSパラサイトの行方を描く。

 というわけで今回は、パラサイトが広まっていった理由などが展開されて、いかんせん説明がち。今の世の中に疑問を投げかけるようなセリフもあって説教クサく感じる場面も多々ある。そこに加えて、人間の子供を出産した最強パラサイト・田宮良子と、新一のガールフレンド里美の母性が全開となり、情感にも訴えてくる。
 原作を読んでいないので分からないが、作者の言いたいことをぜーんぶツッコミました!という感じ。でもさ、ダニー・ボイル監督『28日後…』や『ダークナイト』を見ても分かるように、くどくど説明されるより理由なき凶行が一番怖いんだけどね。
 そしてラストは物議を醸すこと必至。橋本愛のサービスシーンといい、話題を呼ぶためにワザと観客がツッコミたくなるシーンを入れているのかな?と思うほど。前編が疾走感があっただけに、完結編のトーンダウンはもったいない。★★☆☆☆(中山治美)

 【データ】
監督・VFX:山崎貴
脚本:古沢良太、山崎貴
出演:染谷将太、深津絵里、阿部サダヲ、橋本愛、浅野忠信ほか
4月25日(土)から全国公開
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中山治美のプロフィル
 なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き。
(共同通信)

(C)2015映画「寄生獣」製作委員会
中山治美