亡き兄思い舞踊披露 北島さん、戦争の悲劇表現


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観客とカチャーシーを踊る北島角子さん(中央)=5日、宜野湾市の佐喜眞美術館

 役者の北島角子さん(83)や民謡グループのフォーシスターズらが出演する佐喜眞美術館(宜野湾市)の15回目の「こどもの日公演」が5日、同美術館であった。北島さんは戦死した兄の上間一彦さんを思い、創作舞踊「思い出の花風」などを披露。フォーシスターズも戦死した3人の兄を思い、「やっちー」(上原直彦作詞、普久原恒勇作曲)などを歌った。

 こどもの日公演は2001年、同館職員で北島さんのめいの上間かな恵さん(49)が「子どもたちにきれいなうちなーぐちに触れてほしい」と企画した。同館の「沖縄戦の図」の前で行われる。北島さんの演技は毎年深みを増し、館長の佐喜眞道夫さんは「絵の中の人が出てきて話しているようだ」と評する。
 北島さん家族が南洋のパラオにいたころ、大阪の叔父の元に身を寄せていた兄一彦さんは18歳で出征、20歳で戦死した。琉球舞踊の「花風」はいとしい人を遊女がひっそりと見送る舞踊だが、北島さんは息子を見送ることすらできなかった母の思いを「思い出の花風」で表現した。踊りながらうっすらと涙を流した。
 戦後生まれのフォーシスターズの4人には實(享年9)、優さん(享年6)、進さん(享年3)の3人の兄がいた。家族がテニアンから沖縄に引き揚げる際、船が米軍の魚雷を受けて亡くなった。優さんと進さんは写真も残っていない。メンバーは、会うことがかなわなかった3人の「やっちー(兄さん)」に語り掛けるように歌った。
 北島さんは「大人が子どものことを考える大切な日だ。私の心も(美術館と)一つ。元気がある限り続けたい」と力を込めた。