県、国に慰霊塔移転要請へ 高齢化で管理困難


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 県は沖縄戦の犠牲者を鎮魂する慰霊塔全440基のうち、管理者の不在などで管理が困難になっている慰霊塔について、移転や処分などを国に求める要望書を提出する方針を決めた。国が全国の慰霊塔について本年度から実態調査に着手することに合わせたもので、本年度中に提出する。具体的な要望内容は今後、検討を進めるとしているが、保存の費用負担を求めることも視野に入れる。

 県平和援護・男女参画課によると、県が2012年に調査した結果、全慰霊塔のうち管理が困難になると予想される慰霊塔が20基、所有者不明で既に管理が困難になっている慰霊塔が18基あった。今後、体験者の高齢化により管理困難な慰霊塔はさらに増大することが懸念されている。
 県は13年度、管理困難な慰霊塔について、沖縄戦体験者や遺族、自治体職員らでつくる検討協議会を設置し、管理方法などについて協議を進めてきた。協議会では「戦争の責任は国にある。国が補助金を出すよう県から働き掛けてほしい」との声が上がっていた。
 県は要望書提出の検討を進めてきたが、厚生労働省が本年度から3年かけて慰霊塔の実態調査に着手することから、「実情を伝える適切なタイミングになった」として提出を決めた。厚労省によると、全国の慰霊塔でこれまで国費で管理費用が賄われた例はない。
 県平和祈念財団などによると、県内各地の慰霊塔は戦後間もない時期に各集落で納骨堂として設置したものや、戦友会・同窓会、県外自治体の設置がある。財団や自治体の管理している慰霊塔は管理について当面の不安はないが、管理者が不明であったり、戦友会などが高齢化していたりする慰霊塔の管理問題が課題になっている。(中里顕)