生きる大切さ後世へ 沖縄愛楽園の「交流会館」開館


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一般公開が始まり、多くの人が訪れている沖縄愛楽園の「交流会館」=1日、名護市

 【名護】ハンセン病に関する誤った認識による差別の歴史を伝える名護市の沖縄愛楽園内の資料館「交流会館」が1日、開館した。一般公開が始まったこの日は、入所者も多く訪れ「生きることの大切さを次世代に伝えたい」「いわれのない偏見を受けた。多くの人の苦しい過去を理解してほしい」などと述べていた。

 新たな施設として同様の資料館を構えるのは全国の国立ハンセン病療養所では初めて。会館はキリスト教伝道者の故青木恵哉氏が土地を購入し、患者らと住んだ愛楽園発祥地に建つ。
 1階常設展示場にある証言集の中には「奪われる命」のテーマで、「入園の日に名前を変えられた」「戸籍から抜かれた」「家族と引き離され人間の尊厳を奪われた」など、強制隔離政策で受けた苦しい胸の内が明かされている。火葬作業や養豚作業など、沖縄戦後の自給自足の日常を「患者らの作業」としてまとめたコーナーもある。
 2階企画室には入所者が手掛けた押し花や折り紙、釣り用のルアー、エコバッグなどが展示されている。
 家族と写る写真をさすりながら眺めた入所者の松川俊夫さん(92)は「一つ一つの資料や写真に思い出が詰まっている」と会館の完成を喜んだ。同じく入所者の70代女性は「間違った歴史認識を理解してもらえる施設だと思う。3人の子ども、11人の孫たちにもぜひ見せたい」とかみしめるように話した。【琉球新報電子版】