空自ヘリ、離陸ANA機前を横切る 那覇空港、管制許可なく


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 3日午後1時24分ごろ、那覇空港で離陸するために滑走していた全日空新千歳行き1694便ボーイング737(乗客乗員83人)の前を、航空自衛隊那覇ヘリコプター輸送隊に所属するCH47Jが管制官の指示を受けずに横切って飛行した。

全日空機は急きょ離陸を中止した。管制官は、着陸のために全日空機と同じ滑走路に進入中だった新石垣発の日本トランスオーシャン航空(JTA)610便ボーイング737(同44人)に着陸やり直しを指示した。JTA機はそのまま着陸し、滑走路上にいた全日空機と衝突する危険性もあった。一連のトラブルによる負傷者や機体の損壊はない。
 国土交通省航空局はJTA機の着陸について、航空法施行規則で定められた「他機が使用中の滑走路への着陸」に該当すると判断した。事故につながる恐れのある重大インシデントとして、運輸安全委員会は航空事故調査官3人を沖縄に派遣した。一方、航空局の別の担当者は取材に「空自ヘリが指示のないまま動きだしたことが発端だと思う」と語った。
 JTAによると、機長は聞き取り調査に対して「管制官の着陸やり直し指示は、機体が地面に着いて逆噴射をした直後だった」と答えており、着陸やり直しが不可能なタイミングで指示が出たとの認識を示した。機長によるとJTA機が停止した時に、全日空機との距離は4~500メートルしか離れていなかった。空港の固定カメラの映像では、全日空機と滑走路上の同じ地点へJTA機が来るまでに約25秒差しかなかった。
 航空局によると、全日空機は那覇空港の滑走路を北から南向けに滑走していた。空自ヘリが滑走路南端付近を東側から西側へ横切って飛行したため、全日空機は逆噴射して滑走路の中間付近で停止した。
 空自那覇基地によると、空自ヘリは輸送任務のために那覇から久米島に向け離陸した。同基地によると、操縦士は「滑走路で離陸待機していた全日空機への離陸許可を、ヘリへの離陸許可と認識して離陸した」と話しているという。
 那覇基地の鈴木康彦基地司令は「重大な事故に直結する可能性があるものと受け止めている。再発防止に万全を期す」とのコメントを発表した。
 航空事故調査官は3日夜に那覇空港に到着。今後、詳細な状況やJTA機が管制官の指示に従わなかった理由などを調査する。
 全日空便は欠航となり、乗客は別の便で新千歳に向かった。