独居高齢者宅に下宿 離島出身生徒が見守り


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モデルケースでの下宿生活を楽しむ新垣佳代子さんと沖縄工業の生徒ら=19日、那覇市繁多川の新垣さん宅

 離島や本島北部出身の学生に一人暮らしのお年寄り宅の空き部屋を下宿先として提供することで、学生の金銭的負担軽減とお年寄りの身近な生活支援を両立させる独自事業に那覇市の繁多川公民館(南信乃介館長)が取り組んでいる。

夏休み期間中、沖縄工業高校生6人が繁多川の個人宅に下宿するモデルケースを実施。同館は今後、関係者への聞き取り調査から課題などをまとめ、来年度以降の本格的な下宿支援事業開始につなげたい考えだ。
 同事業は、繁多川周辺の一人暮らしのお年寄り宅に離島など遠隔地出身の学生を低額で下宿させる代わりに、家主であるお年寄りの見守りや身近な生活支援を学生が担う仕組み。互いに快適な生活を送るため、共同生活上のきめ細かなルールも関係者間で決める。
 同館はことし6月に地域住民を対象に説明会を開催。条件が一致した繁多川に住む新垣佳代子さん(67)が、夏休みで学校の寮を使用できない駅伝部の生徒6人を受け入れ、約1カ月間の共同生活を送った。新垣さんは、下宿支援者に応募した理由を「夫も亡くなり、子どもたちも独立して寂しかったが、地域に貢献したいと思っていたので引き受けた」と説明した。
 下宿を体験したのは、うるま市出身の大石大輔君(17)、大城義己君(16)、宮古島市出身の新里凌也君(16)、親泊一生君(17)、多良間村出身の来間海都君(17)、与那国町出身の古見謙太郎君(15)。生徒たちは昨年の夏休みは、校内の一角にある板間で自炊生活をした。ことしは「食事も作ってもらえるし、新垣さんとおしゃべりをしたりして楽しい」と下宿生活を満喫している。
 新垣さん宅では19日、早朝練習を終えた6人が新垣さんとの会話を楽しみながら朝食を取り、食事後には食器を洗うなど規則正しい生活を送っていた。新垣さんは「今では6人とも名前を呼び捨てにできる関係になった。刺激的で毎日が楽しい」と笑顔を見せた。
 南館長は事業の意義について「一人暮らしのお年寄りが支援されるだけでなく、支援する側にも回れる。生きがいを得ることで地域で元気に暮らしていける」と説明。今後の本格的な事業推進に意欲を見せた。