情報流出、監視に不安の声 マイナンバー法きょう施行


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 国民一人一人に番号を割り当てるマイナンバー法が5日施行され、12桁の個人番号が確定し、市区町村から各世帯へ「通知カード」の発送作業が始まる。郵便書留で送られるが、対象が約5500万世帯に上るため、届き始めるのは10月中旬ごろからになる。制度の導入で県民は税や社会保障に関する手続きの一部が簡素化されることを歓迎する一方、将来的にさまざまな個人情報がひも付けされ、民間でも利用されることに不安の声が上がった。

 「便利になるのはいいことだが、行き過ぎた便利さには弊害がある」と語るのは仲本和男さん(75)=那覇市。預金情報への付番をはじめ、将来的に資産や健康に関する情報なども国に把握される恐れがあることを挙げ「国家が国民を監視する社会がつくられるように思えてならない」と危機感を抱く。
 「映画などで見るデータ管理された社会はかっこよくも見えるが、実際はデメリットが多いと思う」と危機感を表すのは仲村宮子さん(58)=那覇市、パート。韓国や米国などで個人情報が流出し、詐欺などの成り済まし被害が相次いでいることを挙げ「外国では失敗事例が多くある。なぜ日本がこの制度を取り入れようとしているのか理解できない」と批判した。
 豊見城市に住む長嶺昌栄さん(65)=介護職=は「効率化を目指すことは必要だ」と手続きの簡略化などに一定の理解を示しつつも「マイナンバーが適切だとは思えない。政府は自らの情報は出さず、国民の情報を積極的に管理する。こんなばかな話はない」と憤った。所得や資産の情報も政府が把握し、困窮世帯の若者に自衛隊入隊を促す“経済的徴兵制”の懸念があることなどを挙げて「安保法、秘密保護法ともつながっていると感じる。国民はもっと反対の声を上げるべきだ」と主張した。
 一方、マイナンバーに好意的な意見もある。うるま市に住む香田涼さん(25)=大学院生=は「行政に関わるシステムの効率化が見込める。コスト削減になる。情報漏えいなど不安な要素もあるが、プライバシーを保護する環境を整えた上で、マイナンバーの運用は日本全体の利益につながる」とその必要性を語った。