日曜インタビュー/黄彬華さん/教育大国目指すシンガポール/基地依存脱却し交易立国に

  基地経済からの脱却を目指した沖縄で今、複数の市町村が基地誘致の動きを見せる。長引く不況と財政難からの脱却が、誘致活動に弾みをつける。そんな中で、基地経済からの脱却を図り、世界のビジネスセンターとして変ぼうしたシンガポールの知恵と新たな挑戦を、シンガポールの有力紙『聯合早報』の前論説委員・黄彬華(ウォン・ビン・ファ)さんの来沖を機に聞いた。
  -シンガポールの独立の経緯は。
  「いまシンガポールは貿易立国だが、1965年に独立した時は、英国軍の基地しかない島だった。土地も大半が湿地帯で、工場を建てる場所もない。企業誘致にはまず土地造成からやらねばならず、それには時間がかかる。そこで英国軍が残したドックで艦船の修理と造船から着手した。この造船所の成功で大きな雇用が生まれた。一つの成功が゛うまくやれば雇用を作れる゛という自信につながった。次に英国空軍基地を拡張し、ハブ空港化し、ボーイングの整備工場、フランスのヘリ製造工場を誘致した。それが今のチャンギー国際空港だ」
  -産業面で成功した理由は何か。
  「シンガポールは賃金も土地も高いが、政府が工業団地を造り、工場も施設も、水道も電気も全部整備して、税制での優遇措置などで外国企業を誘致し、工場を立地させた。外国、特に中国の場合も工業団地はあるが、土地がいくら安くても、水も電気もなければ工場は操業できない。中国では土地を買った企業が水道を引き、発電所を造り、ようやく操業できる。そこで、シンガポールは水も電気も通信施設も備えた工業団地を整備し、入居企業までも含めてセットで中国に持ち込んだ。貿易と同じで、工業団地というノウハウを商品として輸出するようなものだ。シンガポールに仕事を頼むと、企業を連れて造成するというので依頼も増えている」
  -軍事基地撤去に抵抗は。
  「基地撤退で基地従業員が職と収入をなくした。これはフィリピンと同じ。基地撤退で食えなくなると危機感を募らせたが、実際には、そうでもなかった。基地撤退の危機感をバネに、空港・港湾など、基地が残した施設を利用して産業を立地するやり方もフィリピンと同じだ」
  -沖縄の基地問題をどうみるか。
  「沖縄がよその国の基地を、よその人たちのために保有するのはおかしい。外国からみると、沖縄が米軍の基地を拒否しているのかどうか分からない。沖縄は米空軍の基地だから、何かの時、ミサイル攻撃を受けても、世界は同情しない。それは当たり前で、沖縄は米軍基地のために繁栄に成功していると理解されているからだ。そのリスクを負っている。基地を無くしたいなら、基地の代わりになるもっといいものを見つけるべきだ。いいものを見つければ、基地は価値を失う」
  -シンガポールは教育に力を入れているようだが。
  「シカゴ大学やMITなど英仏の十大学がシンガポールに近々、分校をつくる。分校は学部ではなく、大学院。しかもアカデミックではなく、経営学など実学重視。ターゲットは外国学生。少しずるいが、ほかの国が高校まで投資し育てた人材を、大学院に留学させる形で2年でシンガポールが横取りする。その優秀な人材がビジネスネットワークの中心になり、シンガポールの国際的地位も上げてくれる。シンガポールは米国に次ぐ教育大国になる」
(聞き手 編集局長・高嶺朝一)