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<記者コラム>鳥の沼にはまる 池田哲平(北部報道グループ)


<記者コラム>鳥の沼にはまる 池田哲平(北部報道グループ) 屋我地周辺のロープが張られた岩礁の上で繁殖をするエリグロアジサシ(右側)とひな(左下)、左奥はベニアジサシ=7月5日、名護市屋我地
この記事を書いた人 Avatar photo 池田 哲平

 幼い頃、生まれ育った石垣島で、母に連れられ、早朝の野鳥観察に行くことがあった。島の自然の豊かさを知ってほしかったのだろうと思うが、当時は感動も薄かったし、ただただ眠かった。それなのにここ最近、特に、やんばる生活で、鳥の姿を自然と目で追うようになっている。

 北部支社に赴任して、もうすぐ1年半になる。春先の早朝は、アカショウビンの鳴き声が市街の住宅地でも響くことに気付いた。その姿を探そうと、夜明け前の公園をカメラ片手にうろうろ歩き回ったこともある。周囲からは不審な人物に映っただろう。

 5月の愛鳥週間は、ノグチゲラを撮って紙面掲載しようと山道を歩いた。地図として頼りにしていたスマホの電波が次第に入らなくなり、危うく迷子になりかけた。乏しい知識で探すのだから時間が掛かるし、効率も悪い。ただ、撮影したくて仕方ないのだ。

 ある野鳥観察会で、講師が鳥に魅了されることを「鳥の沼にはまる」と表現した。島での早朝の野鳥観察会は「沼」の入り口だったのかもしれない。補食する姿や希少種をたまたま撮影できた喜びで、さらに深みへと入っている。

 やんばるでは、アジサシ類が繁殖を終えると、秋にはアカハラダカやサシバの渡りが見られるようになる。鳥たちの生き生きとした姿にピントを合わせ、紙面で届けたい。と言いつつも、鳥の姿を見たい欲求の方が強いのかも。