残っているのはサハリンに300人ほどとも言われるウイルタ族。日露戦争から第2次大戦、そして戦後を日ロ両国に翻弄された少数民族だ
▼ウイルタとはトナカイの民の意。トナカイで移動し狩猟や漁労で生きた先住民族だが、一部は集住させられ、日本から「土人」扱いを受けた。日本語教育を強要され、戦時下に日本のスパイ活動を余儀なくされた人もいた
▼「なくなりそうな世界のことば」(吉岡乾著)によるとウイルタ語は雪にまつわる表現が多彩だ。「シマナ」は降っている雪。ほかにも積もった雪、木の上に積もった雪、溶けかけた雪など細かく分類される。そのウイルタ語は消えかけている
▼琉球諸語がユネスコの「消滅危機言語」とされて久しい。世界で話されているという7千近い言語のうち、2500ほどが消滅の危機にあるという
▼県内でもしまくとぅばの火を消すまいとあの手この手で取り組まれる。「しまくとぅばの日」のきょうだからこそ、それぞれの歴史をくぐり抜け、人々に紡がれてきた無数の言葉に耳をすませたい。