<金口木舌>八重山の自然、色彩紡ぐ


<金口木舌>八重山の自然、色彩紡ぐ
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 高橋治さんの小説「星の衣」は沖縄の伝統織物に生涯をかける2人の女性を描く。うち1人は八重山上布の復元に挑んでいる。高橋さんは沖縄の織物の中でも上布を好んだ

▼上布に関する高橋さんの随筆が本紙に載ったことがある。八重山上布の第一人者である新垣幸子さんの作品を「ぼうぜんとさせられるほどの明るさがある。白保の珊瑚礁に代表される海の色を作品にうつし替えたと思うほど」とたたえた

▼国の文化審議会が新垣さんを人間国宝に認定するよう答申した。伝統的技法の体得、高い芸術性が評価された。琉球王国時代の八重山上布を調査し、当時の技法を復活させたことも大きな功績だ

▼先日、新垣さんの近作を見た。白い布地に施された模様は濃淡のある緑色。涼やかで芽吹きを思わせた

▼沖縄は「染織王国」と称される。交易によって築かれた多様な文化とともに、人頭税という過酷な税制の貢納品として八重山上布が生産された歴史も忘れてはならない。新垣さんはその歴史の上に立ち、沖縄の染織文化を切り開いてきた。