＜金口木舌＞再確認したい価値

　パリ五輪が開幕した。県勢の活躍は楽しみだし、エッフェル塔やベルサイユ宮殿といった名所が会場となっていることもあり、見どころ満載だ

▼残念なのは「五輪休戦」が実現しなかったこと。ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃が止まる様子は見られない

▼五輪休戦の根底にあるのは五輪の精神「オリンピズム」だ。スポーツを通して心身を向上させ、あらゆる差異を超えてフェアプレーの精神で理解し合えば「平和でよりよい世界の実現に貢献する」というもの。近代五輪の父クーベルタン男爵が提唱した

▼世界は今、分断が指摘される。宗教や文化、言葉、価値観。分断の種も視点を変えれば、世界は多様ということ。言葉がいらないスポーツはあらゆる壁を乗り越え、他者を理解する第一歩になりうる

▼クーベルタンはパリで生まれたフランスの教育者だ。五輪の価値を再確認するのに、今回以上の機会はない。そんなことを頭の片隅に置きつつ、世界中の誰かと大会の素晴らしさを共有できればいい。