<金口木舌>想像の世界を旅する


<金口木舌>想像の世界を旅する
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 児童書「エルマーのぼうけん」は、青と黄色のカラフルな竜を助ける少年の物語。少年は、輪ゴムや歯ブラシなど身近な物を使ってピンチを切り抜ける。日本では1963年に初版が刊行され、子どもの心をつかんだ。約40年前、夢中になったのを思い出す

▼著者は米国人女性ルース・スタイルス・ガネットさん。今年6月に100歳で亡くなった。化学者だったが、自分の興味は児童文学だと気付き、22歳でこの本を執筆した。ユーモアに富みつつも描写が緻密なのは、積み重ねた研究の影響か

▼1年半ほど前、大宜味村でこの本に再会した。廃校となった小学校図書室の本を無料で譲渡する催しだった。並べられた児童書の中に見つけた時は小躍りした

▼わが家の1冊となった本には、かつての持ち主の痕跡がある。表紙に「昭和50年度卒園記念、北谷村第一保育所」、中表紙に「津波小学校63・4・20」「寄贈」の文字。本の旅を、ガネットさんならどう描くだろう

▼夏休み真っ盛り。猛暑から避難するため図書館に通う子も多いだろう。この機会に、お気に入りの本を見つけて、想像の世界を旅してもらいたい。