心が行き届いて、礼儀正しい。「丁寧」という言葉は本来そういう意味で使う。その語意に沿う気持ちを持ち合わせていない人が使うと言葉の価値が損なわれる
▼辺野古新基地建設で大浦湾側のくい打ちを強行したと報じる21日付本紙に玉城デニー知事周辺の人が国への憤りをあらわにした。怒りの矛先は「丁寧」の言葉。「丁寧に説明するという言葉自体が『政府は沖縄と向き合っている』と理解を得るための県外の人向けの欺瞞(ぎまん)でしかない」と容赦ない
▼戦史・紛争史研究家の山崎雅弘さんは、2012年の第2次安倍政権以降、特定の言葉が本来の意味を外れて使われる事例が激増したと言う。「丁寧」もその一つ。著書「詭弁社会」で指摘する
▼「丁寧」には「実際にそうなのか否かを客観的に評価する基準がない」という。確かに何をもって丁寧だと評価するかは量的、質的に検証が難しい。ゆえに説明する気がない場合も使われる
▼使い手によって本来の意味は失われ、言葉は貶(おとし)められる。政府に裏腹の意味を付与された「丁寧」は、不誠実な態度をごまかす方便ともなった。そんな軽薄な言葉だったのか。