霊長類の多くが群れをつくるのは外敵から身を守り、安心して暮らすのに適しているからという。ゴリラ研究者の山極寿一さんの著書などにあった。中でもゴリラの群れのリーダー論は興味深い
▼こわもてに見えてゴリラは繊細で調整能力に優れるそう。仲間の紛争では少数派にも目配りし、図体(ずうたい)に関係なく平等に接する。愛嬌(あいきょう)もあって、何より仲間の信頼が厚いのは、前に立ち、後ろ姿だけを見せる態度。振り返るそぶりは仲間に不安を抱かせるため禁じ手らしい
▼この方々にそんな器量があるか。自民党総裁選は12日告示、27日投開票。新総裁が新首相に指名される。日本国民の群れに影響するから一政党の代表選びとはいえ関心事だ
▼焦点は裏金問題など政治資金改革や賃金アップに向けた経済政策。少子化対策も外せない。ここまで防衛費を増やしてどうするつもりか。どれも群れの盛衰に関わる
▼ゴリラと違って、ニホンザルの群れはボス社会だそう。腕力が物を言う。総裁選ではそんなボスたちも背後でうごめく。機嫌を伺い、後ろを振り向いてばかりでは先々が不安になる。各人の後ろ姿が気になる。