約30万人が訪れた第69回沖縄全島エイサーまつり。本来の念仏踊りを超えてマーチングバンドのような陣形でアクロバティックに舞う。ワールドカップを開いていいほどの芸能ではないか
▼芭蕉布の着物に棕櫚(しゅろ)のかつら、白塗りの道化「チョンダラー(京太郎)」は酔っぱらいの手足さばきで舞った。滑稽な動きで会場を沸かせながら隊列の乱れをそっと正す
▼沖縄市東青年会の森東太一さん一家は、父母と子の3人が独特な化粧姿で華麗に演じた。名護市伊差川青年会では元力士の浪満がドラえもんのメークで登場した
▼「沖縄の遊行芸」(池宮正治著)によると「チョンダラー」や「ニンブチャー(念仏者)」は中世以降の葬式や正月で念仏を唱えたり、芸を演じたりしたが、戦後にかけて消えた。現代エイサーの京太郎は「サナジャー(ふんどしをした人)」が近い
▼宜野湾市伊佐青年会には女性初の京太郎「サンダー」が誕生した。「サントゥリサーシヌ ミーサイナー(鳥刺しを見なさいな)」(京太郎の「鳥刺し舞」より)。戦禍を挟み数百年の時を経て、島の芸能は今もみずみずしく息をしている。