<金口木舌>常道を外れる


<金口木舌>常道を外れる
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 三権分立の定義は「国民の権利と自由を保障する仕組み」。小学校教師だった坂田和子さんは、そう児童に教えてきた。立法と行政と司法は互いに抑制し、均衡をとって権力の濫用を防ぐ。ひいては国民を守る、と

▼父は1957年に当時の東京都砂川町の米軍立川基地に立ち入って起訴された元被告。「砂川事件」と呼ばれ、一審は「米軍駐留は違憲」として無罪になった。ところが国が上告すると一転有罪に。2008年、事件の常道を外れた背景が明るみになる

▼当時の駐日米大使が無罪判決後、政権に上告を迫り、最高裁長官は事件で密談したと米国の記録にあった。長官は裁判の見通しを伝え、大使は「判決は覆されるだろうと感じている印象を受けた」という。司法を含めたなれ合いに驚く

▼弁護士が例えて言う。刑事事件の公判継続中に裁判外で事件関係者と裁判官が話し合っていたらどう見られるか。当然、不公正を疑われよう

▼父の遺志を継ぐ坂田さんは賠償を求めて国を訴えた。一審は公平な裁判を害した特段の事情はないとして訴えを退け、二審判決は来年。学校で学んだ三権分立の定義に関わる問題だ。