モンゴル800のアルバム「メッセージ」には隠された曲がある。最後の曲を聴き終えてしばらくすると、静寂を破ってドラム音が流れだす。不意に響く強いメッセージが心に刺さる
▼発売は2001年9月16日。米同時多発テロが世界を混沌(こんとん)に陥れ、世の中は不安に覆われていた。IT革命を経てネット社会が急速に進んだが、思い描いた「21世紀」はほど遠い。就職氷河期という現実が横たわり、虚勢を張らないと社会に認められないような気がしていた
▼当時20歳のメンバーは、ありのままでいることが息苦しい社会を風刺し、「あぁ生きていて良かったと永遠の淵(ふち)言えますように」と歌う。学生の頃に聴き、人生を歩む気力をもらった
▼県はこのほど中卒進路未定や高校中退の青少年16~20歳の実態調査を初めて実施した。これまで支援の必要性を認識しながら、つながりを持てなかった若者たちだ。結果からは、自分の人生すら諦観する姿が浮かぶ
▼人との出会いが好転の契機になるというが、出会いに恵まれない人もいる。音楽でも本でも映像でもいい。生きていて良かったと思えるメッセージを届けなければ。