スーツ姿で警察署を出て、沈痛な面持ちで深々と頭を下げる。出演した映画作品は上映中止に。違法薬物で芸能人が逮捕された時のお決まりの顛末だ
▼依存症は薬物に限らない。ギャンブル、買い物、ゲームなどの行為も。沖縄では飲酒が深刻だ。県内で自立支援へ向け医療費助成が認められたアルコール依存症の通院者は2022年時点で1287人に上る
▼生まれ島の伝統行事に参加する気苦労を聞いたことがある。アルコール依存症の自助グループ断酒会を取材した時のことだ。久しぶりの帰郷なのに、祝いの席で酒は飲めない。最後まで断ったと報告した男性は、他の参加者と喜び合った
▼沖縄市の映画館で映画「アディクトを待ちながら」を見た。アディクト(依存症者)の合唱団がコンサートを開く物語。互いに助け助けられて、本当の「回復」を目指す。依存症は適切な支援で克服できると訴えている
▼映画には実際のアディクトが出演し、中には薬物依存症者もいる。「一発アウト」の風潮に対する作り手の異議申し立てでもある。批判だけでは治らない。助けを求めやすい社会こそ早期回復の鍵となる。